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アップルが“脱Lightning”をここまで引っ張った理由 iPhoneのUSB-Cは「MFi認証なし」に(5/5 ページ)

» 2023年09月14日 16時30分 公開
[西田宗千佳ITmedia]
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10Gbps伝送が「iPhone 15 Pro」だけな理由

 もう1つ、アップルがこのタイミングで決断した理由として「A17 Proの登場」がある、と考えられる。

iPhone 15 Pro実機。カラーはホワイトチタニウム
iPhone 15 Proシリーズに搭載される「A17 Pro」。3nmプロセスで作られる最新のSoCだ

 A17 ProはTSMCの3nmプロセスで作られた初のスマホ向けSoCで、GPUの完全リニューアルを軸とした高性能化が主軸ではあるが、同時に重要な点として、SoCの中に「USB 3」のコントローラーが組み込まれた、ということがある。

A17 Proには「USB 3」コントローラーが組み込まれる

 iPhone 15に組み込まれた「A16 Bionic」を含め、過去のiPhone向けSoCでは「USB 2」ベースの技術が組み込まれ、Lightningでも活用されてきた。

 そのため、データ転送レートは最大480Mbpsまで、という制限も存在する。だから基本的にLightningの転送レートは「最大480Mbpsまで」だったし、iPhone 15も同じく「最大480Mbps」だった。

 旧型のiPad ProはLightningながらUSB 3(USB-IFの現在の表記では「USB 5Gbps」。旧表記はUSB 3.2 Gen1、USB 3.1 Gen1、USB 3.0など)対応だったことがあるし、現行のMacやiPad Proも高速な転送に対応する。

iPhone 15 ProはUSB 3対応
iPhone 15 Proは高速転送を生かし、ProRAWでのテザー撮影やSSDへの動画直接記録などにも対応する

 ただこれらの場合には、SoCの他にUSB 3やThunderboltのコントローラーが搭載されていた。

 しかしA17 ProはUSB 3のコントローラーIPをSoCに内蔵することになり、iPhone 15「Pro」では最大10Gbpsでの転送が可能になった……ということのようだ。すなわち、これまでiPhoneでUSB Type-Cを採用しなかったのは、転送レートの速い規格に対応する準備が整っていなかったため、という見方もできる。

 なお、iPhone 15とiPhone 15 Proでは、同じ「USB-C」ケーブルが付属する。規格的には「USB 2.0」、すなわち最大480Mbpsまでのものだ。iPhone 15 Proで高速転送を必要とする場合、別途USB 3(USB 10Gbps)対応のケーブルを用意する必要がある。

 ある意味で「USBの混沌の中に入っていく」のだが、今は業界全体で「用途に合ったケーブル」を選べるよう試行錯誤している時期でもある。分かりやすさや品質を明確にしたメーカーが先にユーザーの支持を得ることにもなる。「ようやく」行われたアップルの決断は、周辺機器メーカーにとっても大きなチャンスとなる。

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