もう1つ、アップルがこのタイミングで決断した理由として「A17 Proの登場」がある、と考えられる。
A17 ProはTSMCの3nmプロセスで作られた初のスマホ向けSoCで、GPUの完全リニューアルを軸とした高性能化が主軸ではあるが、同時に重要な点として、SoCの中に「USB 3」のコントローラーが組み込まれた、ということがある。
iPhone 15に組み込まれた「A16 Bionic」を含め、過去のiPhone向けSoCでは「USB 2」ベースの技術が組み込まれ、Lightningでも活用されてきた。
そのため、データ転送レートは最大480Mbpsまで、という制限も存在する。だから基本的にLightningの転送レートは「最大480Mbpsまで」だったし、iPhone 15も同じく「最大480Mbps」だった。
旧型のiPad ProはLightningながらUSB 3(USB-IFの現在の表記では「USB 5Gbps」。旧表記はUSB 3.2 Gen1、USB 3.1 Gen1、USB 3.0など)対応だったことがあるし、現行のMacやiPad Proも高速な転送に対応する。
ただこれらの場合には、SoCの他にUSB 3やThunderboltのコントローラーが搭載されていた。
しかしA17 ProはUSB 3のコントローラーIPをSoCに内蔵することになり、iPhone 15「Pro」では最大10Gbpsでの転送が可能になった……ということのようだ。すなわち、これまでiPhoneでUSB Type-Cを採用しなかったのは、転送レートの速い規格に対応する準備が整っていなかったため、という見方もできる。
なお、iPhone 15とiPhone 15 Proでは、同じ「USB-C」ケーブルが付属する。規格的には「USB 2.0」、すなわち最大480Mbpsまでのものだ。iPhone 15 Proで高速転送を必要とする場合、別途USB 3(USB 10Gbps)対応のケーブルを用意する必要がある。
ある意味で「USBの混沌の中に入っていく」のだが、今は業界全体で「用途に合ったケーブル」を選べるよう試行錯誤している時期でもある。分かりやすさや品質を明確にしたメーカーが先にユーザーの支持を得ることにもなる。「ようやく」行われたアップルの決断は、周辺機器メーカーにとっても大きなチャンスとなる。
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