──国が主導するシステム標準化とガバメントクラウドについて「性急である」「細部の検討が足りない」と批判する声も見られます。岡本様は一連の施策をどう受け止めているか、感想を教えてください
岡本 スケジュールについて、もっと弾力的な運用にしてほしかったと思います。どこの自治体もそうだと思いますが、システムはそれぞれ契約期限が異なります。当然、標準化の期限である26年3月以降まで続くはずだった契約もあるはずです。
国は(途中解約の)違約金を保証するとしていますが、そうではなく「次の契約更新のタイミングでは、必ず標準化してね」とすれば、無駄な出費もなかったのではないでしょうか。
あとは、全国一斉に移行するので、システムベンダーにも負荷がかかりそうな点が気になりました。対象自治体の多くが、26年1月〜3月にシステムを移行すると思います。そうなると、システムベンダーにシステムエンジニアが足りず、結局こちらにもしわよせが来てしまいます。
──システムベンダーにとっても難しい状況、と
岡本 今抱えているシステムの保守をしながら開発もする必要があって大変と聞いています。とはいえ、標準化の需要は一時的なので、むやみに人員を増やせないようです。
──逆に、標準化によって期待しているプラスの効果はありますか
岡本 将来的に、(業務用アプリを開発する)システムベンダーによるロックインはなくなるだろうと期待はしています。ただ、効果が出始めるのは標準化が終わった後、次の更新のタイミングになるかなと。
導入して数年間が経過し、他の自治体などからも情報が出てはじめて「○○のシステムが不便だ。××は評判がいいから試してみよう」という流れでの移行がしやすくなるのかなと思います。
──尼崎市はUSBメモリ紛失の一件があり、IT関係については他の自治体よりやりにくい状態かと思いますが、いかがでしょうか
岡本 AWSのセキュリティは大丈夫なのか、といった質問は市議会でも頻出します。
──他の自治体とは情報交換などしているのでしょうか
岡本 兵庫県西宮市、大阪府豊中市、吹田市については、近隣の中核市同士なこともあって、首長やデジタル部門でそれぞれ連絡を取り合っています。
──ガバメントクラウドの対象サービスとして、国産勢として初めてさくらインターネットのサービスが認定を受けました。同社のサービスを使う可能性や、この動向そのものに関する考えをお聞かせください
岡本 もう少し早ければ、選択肢の一つになったかもしれませんが、遅かったですよね。システムベンダーの選定は別として、クラウド基盤については「AWSでないと動きません」というロックインの段階まで進んでしまっています。ただ、選択肢が広がること自体は悪いことではないと思います。
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