とはいえ、まだ日本の家屋ではこうした大型バッテリーを単相三線に接続する工事例は少なく、事業者もやったことがないとして敬遠する例も出るだろう。こうした対応として、ECOFLOWでは事業者向けに複数パターンの施工例などを提供し、対応事業者を増やしていくという。
例としては、パワーコンディショナー有りとなしの配線パターンのほか、集合住宅等で屋根上ソーラーパネルではなく、ベランダ発電レベルのパネルの接続例なども用意されている。基本的には、従来の分電盤から単相三線を二分岐したのち、片側は家庭内配線へ、片側は「DELTA Pro Ultra」へ繋ぐ。
DELTA Pro Ultraの出力と系統電力は、電源切替盤で自動的に切り替えるという格好だ。これはDELTA Pro Ultraの電力が空になったり、外して持ち出したりする際に、自動的に系統電力直結へ切り替えるためである。
価格は、インバータとバッテリーのミニマムのセットで143万円。一方パワーコンディショナーの設置・交換は、ソーラーパネルの出力によって価格が変わるが、30万円から100万円程度、工事費で20万円程度かかる。パワーコンディショナーのほうが多少安いが、電気が貯められないので、電力シフトができないのが弱点となる。
電力シフトは、昨今の電力会社のトレンドだ。九州電力では、メガソーラーからの電力が余る秋口の晴天日には、なるべく出力制限をかけずに電気を使って貰おうということで、電気のタイムセールを行なってきた。その時間帯に電気を使うと、PayPayポイントで還元される。冬場の今は、電力需要が高まる夕暮れ時に節電すると、それもポイントが溜まる。つまり電力需要の平坦化に貢献すると、電気代がお得になる仕組みだ。こうした動きは、他の電力会社でも追従するだろう。
こうした施策にも、DELTA Pro Ultraは対応する。ECOFLOWのバッテリーはすべて、セール時間帯をスマホアプリからセットしておくと、その時間だけ系統電力から充電するといった設定が可能だ。またバッテリーが家庭内Wi-Fiにも接続できるので、外出先からもバッテリー残量や充電切替といった遠隔操作ができる。出かけたあとで電気のタイムセールが始まっても、遠隔で設定できるわけだ。
一方で電気の深夜料金割引は、今後なくなる可能性も指摘されている。ソーラー発電比率が増えれば、昼の買電需要が低くなり、夜の発電量も減っていく。つまり、昼の需要に出力を合わせた結果、深夜は電力が余るという状況が少なくなるからだ。
ただ、こうした家庭用大容量蓄電池の設置は、各自治体の火災予防条例でどのような扱いになるのか、よくわからない部分がある。多くの条例では指定の容量以上のバッテリーを設置するにあたり、設置場所の構造や固定方法などを規定している。ただこれらは固定式のバッテリーを想定しており、可搬型ポータブルバッテリーがその規定に該当するのかは、各自治体や消防署等で判断が違ってくる可能性もあるだろう。
ただ、「災害時に外せる」は大きなポイントになるはずだ。現在能登半島地震に対して、多くのバッテリーメーカーが避難支援としてポータブルバッテリーを提供している。ECOFLOWも七尾市、珠洲市、金沢消防局ほか、災害ボランティアNPO法人らに対してバッテリー、ソーラーパネル、電気毛布等を提供している。また全国各地の自治邸と協定を結び、災害時には製品を提供する用意があるという。
ソーラーパネルの設置義務化には、賛否あるところだろう。だが大型ポータブルバッテリーの普及は、災害時の避難生活を一変させる可能性がある。
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