ボリュメトリックキャプチャーは、「ロボ戦」の演出にも影響を与えた。それが、焦点距離にして6mmや9mm相当の超広角カットをふんだんに使用できたことだ。
「意外と自分の脳内で考えているカメラワークって陳腐なんだなっていうのを突きつけられたんです」「現場にある撮影レンズも11mmが最大ワイド。(ボリュメトリックキャプチャーなら)6mmとかも使っちゃうんですが、それってロケーションとか普通の撮影をやっていたらあまり出てこない発想で、最初のころのダンス動画ってそんなに広角がないんです」(上堀内氏)
「多分そこに発想が至ってなかったんです。ロボ戦で9mmを選んだのも、ワイドを無理やり見せたいのではなく、足元にグっと入ってツーショットで見せたいから」「リアルだとあの広角って作れなくて。単純に超アオリで2人を入れたい時に、それが可能になる世界を知れたんです」(同氏)
このように、映像表現の幅を広げるだけでなく、撮影に掛かるコストでもメリットがあるバーチャルプロダクションだが、日本でも浸透していくのだろうか。
上堀内氏は「日本のドラマ、映画を作る人間がまだ怖がっているというか、踏み入れたら大変そうだなと思っている方が多いと思う」と分析する。
「バーチャルプロダクションは特撮やハリウッド、例えばマーベルなどが使うものという考え方は、強い言葉だがもう遅い」「いつも苦労してるでしょ? 空港のシーンを撮るの。だったらバーチャルプロダクションで撮ったらどう? というのが当たり前になる業界を早く見たい」(上堀内氏)
「こういうシチュエーションが欲しい、という時にバーチャルプロダクションという手段を持っているか、持っていないかの差は大きい。それを理解する方からどんどん演出なり、撮影の視野が広がってくると思っている」と見解を示す。
長年戦隊シリーズに携わってきた大森氏も、「(戦隊シリーズは)47作品目、48年間続いている作品として、シリーズを継続していく手段として大きな武器を得たと思っている」「スーパー戦隊シリーズのスタッフが一番(バーチャルプロダクション)のノウハウがある状況になっている。このノウハウを出しながらどんどん成長していくべきなんじゃないかと思う」と語る。
「1話まるまるバーチャルプロダクション」を実現したことで、無事“テークオフ”を果たした上堀内氏。バーチャルプロダクションとボリュメトリックキャプチャーという新しい武器で、今度はどのような映像表現をわれわれに見せてくれるのだろうか。
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