一方で、10代のうちからノイズキャンセリングを多用していると、言葉の聞き取り能力の発達に悪影響があるのではないかという指摘が英国から出された。BBCが報じたところによれば、耳から聞こえてくる音を分析し、特定の音だけを抽出する脳の働きは10代後半にかけて発達が完了する。
この時期に十分なトレーニングができていないと、音声や雑音を処理する能力が発達できないわけだが、ノイズキャンセリング機能がそれに代わり音を遮断してくれるので、脳が雑音をフィルタリングすることを「忘れてしまう」可能性があるというわけだ。
音は耳で聴くのではない、脳で聴くのだということは、すでに筆者が40年前、音響工学を学ぶ学生の頃から分かっていた。いわゆる「カクテルパーティー効果」と同じ話である。カクテルパーティ効果とは、いろんな人があちこちでしゃべるカクテルパーティにおいても、聴きたい話に集中することで1つの喋り手の話を聞き取れることから、脳が聴きたい音を抽出するという能力の根拠とされてきた。
聴力には異常が認められないにもかかわらず、ターゲットの音や話言葉を聞き取ることができない障害を、聴覚情報処理障害(APD)という。もともとは神経多様性がある人や、脳に損傷を受けた人、子供の頃に中耳炎を患った人に多くみられる障害だったが、これらのカテゴリーに該当しないAPD患者が増えているという。
考えてみればノイキャンイヤフォンは一般のイヤフォンに比べて高価なため、親が子供に与えることはあまりなかった。だが昨今は価格も数千円にまで下がり、子供が自分で買うという事も起こりうるようになった。社会環境にもよるだろうが、電車通学の途中でも勉強したい高校生は、ノイキャンは必須だろう。
イヤフォンが単に音楽を聴く道具から生活家電へと多様的に展開できるようになった今、本当にAPDと10代のノイキャン利用に相関関係があるのか、今後の正確な調査が待たれる。
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