CPAは特に報道支援に特化したものではなく、番組制作にも使えるソリューションである。とはいえ、ベースは時間的な効率化であり、撮影からOAまで短時間で行う報道で使うことにメリットがある。
一方でポストプロダクション作業を伴う番組制作でも、プリプロダクションから放送・配信・二次利用まで一元的に管理できるようなトータルソリューション「IGNITE CONTENT ECOSYSTEM」(以下ICE)を発表した。
今後日本では、コンテンツはかなり大きな輸出産業となることは明白だ。それは国策でもある。一方でコンテンツ制作に関わる労働人口は減少を続けており、ワークフロー全体の効率化が求められている。
そこで注目するのが、各パートを超えたデータ連携だ。例えばこれまで、企画・構成、撮影・収録、ポストプロダクション、送出・配信、二次利用といったパートパートにおいて、持っているデータ構造が違っていた。
最初はWordとかPowerPointだったものが、ある時から台本になり、香盤表になり、キューシートになりといった具合にフォーマットを変えていくが、そのたびに書き写したり入力し直したりしている。番組ができたらできたで、今度は権利情報や出演者情報、あらすじなどの情報を入力し直しである。つまりデータが構造化されていないために、連動できていないのだ。
一方で映像データのほうは、すでにXDCAMで採用されてきたプロフェッショナルディスクの販売終了に伴い、今後はファイルベースでやりとりされることになる。ソニーが推進するXAVCはその代表格だ。
そこでこのXAVCを拡張して、動画の真正性情報や字幕、メタデータなどを持たせられるようにすることで、XAVCを中心に構造化データを流通させようというのがICEのコンセプトだ。番組納品もデータ納品になることを前提に、セキュアなかたちで外部から局へ完パケをアップロードできる仕組みも検討している。
またスポーツイベントでは、スローリプレイや審判補助システムとして稼働している「Hawk-Eye」から取り出せる情報、例えば選手情報や骨格データに基づく3Dキャラクタ生成といったことも二次利用可能な形にしていくなど、番組だけにとどまらない活用方法へつなげようという計画もある。
ICEは放送局向けソリューションではあるが、将来的には芸能プロダクションや芸人らが自ら立ち上げた、YouTubeチャンネルのようなオウンドメディアでも利用できる形にしていきたいという。
このシステムはソニーが全部準備するわけではなく、それぞれの得意分野を持つ企業と連携して、オープンなソリューションとして提供される予定だ。基本的にはライブに近いCPA同様、番組制作もなるべくパッケージ化して、同じプラットフォームで制作することで効率化を図っていこうというのがICEのコンセプトだ。
このように、ソニーが現在フォーカスしているのは、日本独自の課題ともいえる省人化にどう対応していくか、というソリューションである。そこにはAIを使った自動化はあるとしても、その前段階としてワークフロー全体に一貫して流通できるデータを構造化することが重要だというメッセージのように受け取れる。
こうしたデータの構造化は、ハリウッドなどの映画製作では導入されてきたが、テレビ番組制作では、各局にそれぞれ独自のローカルルールがあり、全ての作業がカスタムメイドであった。そこをまず手始めにSaaS的な共通プラットフォームに乗りましょう、そうすれば流れるデータも構造化できますよ、という方法論である。
こうした流れは、「自治体DX」の話と近いものがある。これまでは自治体ごとにばらばらなデータの持ち方をしていたために、IT化されていても横連携できないという課題があった。それを共通プラットフォームに乗せましょう、という方向で進んでいる。
映像制作ではこれまで、製作会社、撮影会社、ポストプロダクション、放送局、ネット配信事業者がそれぞればらばらに情報を持っていた。その情報を共通プラットフォームに載せて構造化し、横連携していきましょうというわけである。CPA→ICEという流れは、まずは局内で閉じている報道から始めて、その後外部連携を進めるという、2段階になっているものと考えられる。
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