小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
「中国製三脚」が問いかけてくる現実 6万円台のビデオ三脚を使って見えた、市場の転換点(3/3 ページ)
作りは丁寧でよく考えられている
以前なら「中華三脚」という蔑称で呼ばれたかもしれないが、細部までかなり念入りに設計されており、作りもしっかりしている。一方でヘッドは6万円という価格と、上位モデル同様の重量に収めるために、かなり切り詰めた作りになっている。油圧は効いているものの、ちょっと動きが重い。
特徴的なX-クラッチ油圧テクノロジーは、一見楽そうに見える。岩場などものすごく段差があるところで展開するプロモーション動画が多く制作されているが、本来そういう足場の悪いところで三脚を使うこと自体がセオリーにないんじゃないかという気もする。ずるっと滑ったらカメラごと転落してしまう。
また足を収納する際に三脚を上下ひっくり返してレバーを握って格納するという動画もたくさんあるが、よく見るとどれもカメラがついていない状態で行われている。アマチュアが何も知らずにまねすると、衝撃でプレートが外れてカメラごと脳天逆落としみたいなことになりはしないかと心配である。プロモーション方法としては、これまでの三脚メーカーのセオリーにはない訴求方法である。
またX-クラッチ油圧テクノロジーは、ボールレベラーがなくても大丈夫といえるのかという問題もある。足場が悪い場所ほど、一度展開したあとに足のハマり具合を微調整するものだが、そうしていると水平がズレる。そのたびにまたカメラを持ち上げて全部の足のロックを外して水平を取るというオペレーションは、妥当なのか。一方でうまく使えば効率は上がるのは確かなので、使う人を選ぶ三脚であるともいえる。
これはどういったユーザーに向けての製品なのか、ということになるが、じっくり腰を据えて同じ場所でパンチルトズーム撮影するというよりは、パッと撮ってはすぐ撤収して移動みたいな、なるべく多くのフィックスカットを撮りたいような撮影に向くだろう。
基本的にはクリエイター/インフルエンサーの意見が色濃く反映されており、いわゆるビデオ系カメラマン向けとは方向性が異なる製品である。そしてクリエイター/インフルエンサーは、その予備軍まで含めればプロカメラマンよりも爆発的に人数が拡大している。また購入意欲も旺盛である。
こうした中国メーカーの動向は、低価格ながら品質が上がったという単純な問題ではない。従来メーカーは質を下げて価格をそろえれば対抗できるわけではなく、ターゲットが違うことを意識して、何かを捨てて何かを拾い、新しいタイプの製品を開拓しなければならない。
そもそも三脚は、「ビデオ」「写真」「トラベル」のようなざっくりとしたジャンル分けがあるだけで、ユーザーターゲット別の分類などはあまり積極的にされてこなかった。今後中国からの参入メーカーが増えれば、製品層が厚くなってくる。ユーザーや用途別のジャンル分けをしていかないと、ユーザー側が選べなくなってしまう。
「高いものは全部できる」「一流メーカーは安心」だけで押し切っていた時代は終わり、撮影にかけるバジェットの幅が広がった現在は、低価格のものも含めて用途によって使い分けることも必要だ。
三脚のような安定したビジネスにも、過酷な再編の波が押し寄せている。
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小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
クラウド活用にリモート編集環境と、映像にまつわるプロフェッショナルの分野にDXの波が押し寄せている。プロの現場で何が起こっているのか。最新のITトピックを小寺信良氏が解説する。
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