2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターなどに所属する研究者らが査読付き学術雑誌PLOS ONEで発表した論文「Smartphone use on the toilet and the risk of hemorrhoids」は、トイレでのスマートフォン使用と痔の有病率との関連を調べた研究報告だ。
スマートフォンの普及により、トイレにスマホを持ち込んでニュースやSNSをチェックする習慣が一般的になっているが、この行為が痔のリスクを高める可能性が明らかになった。
今回の研究は、同センターで大腸内視鏡検査を受けた成人125人を対象に実施。参加者はトイレでのスマホ使用習慣や食物繊維の摂取量、運動量、排便時のいきみなどのアンケートに回答し、内視鏡検査によって直接的に痔の有無が評価された。全体の43%に痔が確認されている。
調査の結果、回答者の66%がトイレでスマホを使用していることが分かった。スマホ使用者は非使用者に比べて年齢が若く(平均年齢55.4歳対62.1歳)、トイレの滞在時間が顕著に長かった。1回のトイレで5分以上過ごす人の割合は、非使用者がわずか7.1%だったのに対し、スマホ使用者では37.3%に上った。トイレ中の主な用途は「ニュースを読む」(54.3%)、「SNSを見る」(44.4%)であった。
さらに、年齢や性別、BMI、運動量、排便時のいきみ、食物繊維の摂取量などの要因を調整した多変量解析の結果、トイレでのスマホ使用は痔のリスクを46%増加させることが判明した。
従来、痔は排便時のいきみや便秘が主な原因とされてきたが、この研究ではスマホ使用者と非使用者間でいきみの程度や便秘の有無に有意な差はみられなかった。
トイレでのスマホ使用による痔の原因には、便座の構造にあると研究チームは指摘する。便座は通常の椅子と異なり、骨盤底を物理的に支える構造になっていない。そのため、スマホへの没入によって無意識にトイレに座る時間が長引くと、肛門周辺のクッション部分に過度な圧力がかかり続け、痔の発症につながるのではないかと考察している。
Source and Image Credits: Ramprasad C, Wu C, Chang J, Rangan V, Iturrino J, et al.(2025)Smartphone use on the toilet and the risk of hemorrhoids. PLOS ONE 20(9): e0329983. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0329983
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