松本明彦氏の現場:デジタル写真時代の表現者 #005(2/2 ページ)

» 2004年02月10日 11時14分 公開
[島津篤志(電塾会友),ITmedia]
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 「『D-graphy』と名付けたそのデジタルフォトの新しい試みはにわかに注目され、グラフィック系の雑誌社から取材依頼が来たんです。最初は『日経CG』だったかな。そこで取り上げていただいた後は『コマーシャルフォト』や多くの紙媒体で特集を組んでいただきました。同時にちらほらとお仕事の声がかかるようになりました」

 「そうこうしているうちに今度はTV局からも取材依頼があって。丸井がスポンサーをしていたプライムタイムの情報番組で、アーティストとして私と川口が紹介され『D-graphy』の知名度は全国的なものに……。そうそう、この番組のオンエア中に『テレビで見た』といって仕事の依頼電話をくださる方が出るオチもつきました」

作品「宝」。あでやかな色合いが印象的だ。朝日新聞社『AERA』掲載
作品「東京天使@三田」。「東京天使」は松本氏の代表的なシリーズ作品のひとつである

 デジタル撮影を始めたのはいつから?

 「95年にキヤノンのEOS DCS3が出たんですね。これを使い始めたのが本格的にデジタル撮影を運用した始まりだったと思います。そして、レンズの資産がキヤノンに傾倒するようになって、現在はEOS-1Dsをメインにしています」

松本氏の使用機材はEOS-1Ds、EOS-1Dが各1台。レンズはEF16-35mm F2.8L USM、EF28-80mm F2.8-4L USM、EF85mm F1.2L USM、EF70-200mm F2.8L IS USMなど
松本氏のノートPC(Prius Note 200B)はアシスタントさんによって常時モニタキャリブレーションされており、じつにきれいな画像を再現しているのであった(カラー・マネジメント・システムはSpyderとMonacoを両方使用)

 現在の松本さんの制作スタイルは?

 「頭の中にあるイマジネーションをビジュアル化させるのが、私の“デジタルフォト”です。そのために精神をリラックスさせて心を解放し、イマジネーションを思いっきり拡げます。そして絵コンテを描きスタッフと何度も打ち合わせを重ね、イメージを共有します。多くの才能あるスタッフが、私を支えてくれています。そして当たり前ですが一番大切なのは、隙のない撮影をすること。『デジタルだから合成レタッチ、後からどうにでもなる』ではダメなんです。『デジタルだからこそ、撮影段階で最高の結果を出す』ことが、作品の完成度を高めます」

 どうすれば写真の仕事に就くことができるのか、見当もつかなかった若かりし日々。その頃に受けた人情を、松本氏は忘れていない。

「当時受けた恩を若い世代に返したい」という思いから、松本氏は月イチのペースで無償の写真講座を開いている。参加する生徒はクチコミ、もしくは氏のサイトを見て集まってくる若い人たち。昨年末には、氏がメンバーである六本木アカデミーヒルズのオフィス内、東京タワーやレインボーブリッジを眺望できる“ゲストルーム”にて2003年最後の写真講座&クリスマスパーティが開かれた。

写真のゲストルームにてインタビュー。この部屋で昨年末(2003年)にクリスマスパーティーが開かれた。松本氏は外出時、モバイルプリンタを常時携行している(写真テーブル上に注目)
インタビューの後、アカデミーヒルズ六本木ライブラリーをひととおり見学させてもらうと、窓の外には夜の帳が下りていた。「ここからの景色を見ていると、仕事のモチベーションが高まるんですよ(笑)」(松本氏)

松本明彦・まつもと あきひこ

 1958年静岡県浜松市生まれ。武蔵野美術大学卒業後、カーデザイナーを経て写真家に転身。まだPhotoshopが存在しない1988年、CGデザイナー川口吾妻氏とのコラボレーションによるデジタルフォトのアート作品「D-graphy」を発表。以来デジタルフォトの先駆者として、広告、雑誌のみならず、SIGGRAPH、IMAGINA、アルル国際写真フェスティバル、東京都写真美術館等で精力的に作品を発表し続け、大学、専門学校等で後進の指導にも当たる。代表作に「東京天使」「OPERA ARIAS」「神々の黄昏」等。ディジタル・イメージ運営委員。デジタルカメラ学習塾運営委員。

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