悩めるへクター氏を救えるか?──「Phenom 9900」ベンチマークテストで2008年のAMDを占う:イマドキのイタモノ(1/3 ページ)

» 2007年12月15日 00時00分 公開
[笠原一輝,ITmedia]

コアクロックが2.6GHz、HyperTransport 3.0はクロックを2GHzに引き上げた

正式発表前のPhenom 9900

 AMDは、同社初のデスクトップPC向けクアッドコアCPUとなるPhenom 9600、同 9500をリリースしたばかりだが、早くも次に登場する製品の情報を明らかにしつつある。Phenom 9600のレビュー記事でも紹介したように、AMDは、2008年の第1四半期に「Phenom 9900」「Phenom 9700」という2つの上位モデルを投入することを明らかにしている。今回は、2.6GHzで動作するPhenom 9900のエンジニアリングサンプル(以下ES品)を利用して、2008年に実現されるという最上位モデルPhenomのパフォーマンスに迫る。

 繰り返しになるが、今回評価に用いるPhenom 9900(ES品)は、AMDが2008年の第1四半期にリリースを予定している製品のエンジニアリングサンプルだ。AMDが明らかにしている公式なスペックによれば、以下のようになる見込みだという。

動作クロック コア数 TDP L2キャッシュ L3キャッシュ HyperTransport
Phenom 9900 2.6GHz 4 140ワット 2Mバイト(512Kバイト×4) 2Mバイト(共有) 4000MHz(2000MHz双方向)
Phenom 9700 2.4GHz 4 125ワット 2Mバイト(512Kバイト×4) 2Mバイト(共有) 4000MHz(2000MHz双方向)
Phenom 9600 2.3GHz 4 95ワット 2Mバイト(512Kバイト×4) 2Mバイト(共有) 3600MHz(1800MHz双方向)
Phenom 9500 2.2GHz 4 95ワット 2Mバイト(512Kバイト×4) 2Mバイト(共有) 3600MHz(1800MHz双方向)

 従来のPhenom 9600/同 9500との最大の違いは、動作クロックだが、それ以外にはノースブリッジとの接続に利用されるシステムバスとなるHyperTransportの動作周波数が1.8GHz(双方向)から2.0GHz(双方向)へと引き上げられたことが挙げられる。ただし、CPUそのものの動作クロックが引き上げられる場合と異なり、こうした外部バスの動作クロックが引き上げられても性能に影響を及ぼさないことが多い。特に、PhenomやAthlon 64のようにメモリコントローラがCPUに統合されている場合に直接的な効果は見えにくい。しかし、CPUとGPUは、その間をHyperTransport、ノースブリッジ、PCI Expressなどを介して接続されているので、それらの間でデータをフルロードする場合などにHyperTransportの動作クロックアップの効果を発揮する場合が考えられる。

Phenom 9900では「TLBのエラッタ」改良予定

CPU-Z(1.41)で表示したPhenom 9900の情報

 今回利用したPhenom 9900(ES品)は、2008年の第1四半期にリリースされる予定のPhenomと異なる可能性が高い。具体的には、現在のPhenomシリーズのステッピング(微小な改良が加えられた場合に用いられる“変更された版”を示す言葉)は「B2」と呼ばれるものになっているが、2008年の第1四半期にリリースされるPhenom 9900では「B3」と呼ばれる1つ新しいステッピングのダイが利用されるとみられている。

 B2ステップではTLB(Translation Lookaside Buffer)と呼ばれる部分に問題が発見されている。メモリアドレス(メモリの中で具体的にデータが格納されている場所のこと)をソフトウェアが利用している仮想アドレス(x86ではソフトウェアは仮想的なアドレスを利用するため、このように呼ばれる)から物理アドレス(実際のメインメモリ上の場所)に変換するときに、これを高速に行えるようにある種のキャッシュとしてTLBは動作する。OEMメーカー筋の情報によれば、現在のPhenom 9600/同 9500に利用されているB2ステップではこのTLBにエラッタ(ハードウェアレベルに原因があるバグのようなもの)が発生したとAMDから通知されているということで、ある特定の処理を実行させると問題が発生する可能性があるという。AMDでもすでにこの問題を認識しており、将来的にはPhenomに対応したマザーボードのBIOSでこのエラッタに対応する修正が入る予定だという。

 このBIOSによる具体的な修正方法については明らかになっていないものの、TLBというハードウェアの問題であることを考えると、対処法はTLBを無効にするぐらいしか対処法はない。TLBを無効にしたら、性能は低下すると考えるのが妥当だろう。OEMメーカー筋によれば、AMDもその修正で性能は低下することを認めており、Phenom 9600の性能も先日のレビュー記事で紹介した結果から低下する可能性があるとコメントしている。

 OEMメーカー筋の情報によれば、新しいB3ステッピングではこのエラッタの修正がハードウェアレベルで施される予定になっている。B2ステッピングの修正対策で行ってるのが筆者の予想する「TLBの無効」であった場合、おそらく、ハードウェアレベルで修正が施されるB3ステッピングでは、再びTLBが有効になっているはずなので、性能低下を回避できるはずだ。また、B2ステップで課題となっている「思わしくない歩留まり」の状況も改善されると予想されており、より高いスピードグレード(例えば、Phenom 9900のような2.6GHz動作が可能なもの)なども多数採れるようになるはずなので、より高クロックなモデルも実現可能になると期待されている。

 以上のように、ステッピングがB3へ移行すると明るい未来が開けてくるPhenomだが、今回テストしたPhenom 9900(ES品)は、B2ステップで、TLBのエラッタはまだ修正されていない。ただ、このエラッタが、今回用いたベンチマークテストには影響がないので、今回の測定結果は実際の製品に近いパフォーマンスがでていると考えることができるだろう。

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