“ネイティブ”は“ネイティブ?”に勝るか──Phenom出荷直前レビューイマドキのイタモノ(1/3 ページ)

» 2007年11月22日 09時00分 公開
[笠原一輝,ITmedia]
評価に用いたPhenom 9600

 AMDが“Agena”(アジェーナ)のコードネームで開発を進めてきたクアッドコアCPU「Phenom」が11月19日に発表された。最初に登場するのは「Phenom 9600」(動作クロック2.3GHz)と「Phemon 9500」(動作クロック2.2GHz)の2モデルで、続けて2008年第1四半期には動作クロックが2.4GHzとなると見られる「Phenom 9700」と、同じく2.6GHzになると見られる「Phenom 9900」も追加される見通しだ。

 このレビューでは、きょうにも出荷される見込みの2つのモデルのうち、Phenom 9600のエンジニアリングサンプルを用いたベンチマークテストの結果から、AMDのクアッドコアCPUのパフォーマンスを検証してみたい。

4つのコアに専用の2次キャッシュを搭載するPhenom

 Athlon 64 X2からPhenomになって変更された仕様をまとめると以下のようになる。当然ながら、最大の改善点は内蔵されているCPUコアの数が2つから4つに増えたことになる。

Phenom Athlon 64 X2
コア数 4 2
コアあたりL1キャッシュ 128Kバイト(命令64Kバイト+データ64Kバイト) 128Kバイト(命令64Kバイト+データ64Kバイト)
コアあたり2次キャッシュ 512Kバイト 512Kバイトないしは1Mバイト
3次キャッシュ 2Mバイト -
浮動小数点演算 128ビット 64ビット
メモリ DDR2-400/533/667/800/1066 DDR2-400/533/667/800
システムバス 1800MHz/1800MHz(上り/下り) 1000MHz/1000MHz(上り/下り)
製造プロセスルール 65ナノメートル 65ナノメートルないしは90ナノメートル

 コアを4つ内蔵しているという意味では、インテルのCore 2 Extreme/Quadシリーズと同じだが、その構造は大きく異なっている。Core 2 Extreme/Quadが、「デュアルコアチップ」をCPUの基板上に「2つ搭載」するMCM(Multi Chip Module)と呼ばれる実装方法を採用することでクアッドコアを実現しているのに対して、PhenomではCPUのダイの設計段階から独立した4つのコアを実装している。AMDの言葉を借りるのであればPhenomは“真のクアッドコア”ということになる。

 インテルのクアッドコアと比較した“真のクアッドコア”のメリットの例としてキャッシュの同期処理が挙げられる。各コア間でキャッシュの同期(これを“コヒレンシ”と呼ぶ)をとるときに、インテルの場合はCPUの動作クロックより低速なシステムバスを必ず経由する。そのために、システムバスがボトルネックになって性能が低下する場合がある。Phenomでは、すべてのコアとキャッシュメモリがCPUダイの内部にあるので、CPUより低速なシステムバスを経由しない。それゆえに、キャッシュの同期も高速に行えるのだ。理論的には、Phenomのデザインはより高い性能を発揮させやすいと言える。

 ただし、CPUコアを増やして複数のスレッドを同時に処理するようになると、結果的にメモリへのアクセスが多数発生し、CPUがメモリからデータを読み出すまでにかかる時間であるメモリレイテンシがより長くなるという問題が起こる。メモリレイテンシが長くなると、CPUが何も処理せずに待っている時間が増え、結果的に処理能力が低下することになる。これを防ぐために、PhenomではデスクトップPC用としては珍しい3次キャッシュを2Mバイト搭載している。この3次キャッシュは各CPUコアで共有されており、メモリレイテンシを削減できる。なお、各CPUコアにはAthlon 64 X2と同じく、128Kバイト(命令64Kバイト+データ64Kバイト)のL1キャッシュと512Kバイトの2次キャッシュを備えており、この点ではAthlon 64 X2とほぼ同等のスペックとなっている。

 各コアの基本的な設計はAthlon 64 X2に近いが、若干の改善も加えられている。具体的には分岐予測ユニットと浮動小数点演算ユニットで、分岐予測の効率を改善したり、浮動小数点が128ビット単位でできるようになったので、特にマルチメディアやゲーム系でのパフォーマンスが向上するとAMDは説明している。

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