動作クロック2.3GHzのPhenom 9600に比べて、2.6GHzのPhenom 9900(ES品)は動作クロックが上昇した分だけリニアに性能が上がっている。Phenom 9600を2.2GHzにした「Phenom 9500 相当」、Phenom 9900を2.4GHzにした「Phenom 9700 相当」の結果を見てもそれは明らかで、動作クロックが上がっていけば、Phenomのパフォーマンスが順調に伸びていくと考えていいだろう。
メモリにDDR2-1066を利用した場合にも(数%程度に過ぎないが)パフォーマンスが確実に向上している。現時点(2007年12月)ではJEDEC準拠のDDR2-1066はほとんど流通しておらず、オーバークロックメモリを利用せざるを得ないのが現状ではあるが、それでも1066MHzで動作するメモリを持っているならばチャレンジする価値があるだろう(なお、AMD 790FXマザーボードの中にはDDR2-1066オーバークロックの設定では利用できない場合もある。幸いにして、今回テストで利用したASUSの「M3A32-MVP」はBIOSセットアップでメモリのクロック、電圧、レイテンシなどが細かく設定できた)。
インテルのCPUラインアップとの比較では、Core 2 Quad Q6700(または、Core 2 Extreme QX6700)とかなり近いスコアとなっている。今回行った10種類のベンチマークテストのうち、SYSmark2007の結果で大きく下回っているのを除けば、DDR2-1066と組み合わせたPhenom 9900はベンチマークテストによって、ちょうど5勝5敗と、ほぼ互角の結果を残している。くしくもCore 2 Quad Q6700はPhenom 9900(ES品)と同じ2.6GHz動作だ。現状のPhenomのパフォーマンスは同じクロックのCore 2 Quadシリーズと互角と言うことができるのではないだろうか。
ベンチマークテストの結果からは、Phenom 9900(ES品、2.6GHz)のパフォーマンスは、TLBエラッタの修正がされていないPhenom 9600(2.3GHz)に比べてクロックが上がった分だけ性能が向上しているのが確認された。インテルのCPUと比較した場合でも、ベンチマークテストの種類によって優劣は変わるものの、同クロックのCore 2 Quadと互角の結果を残している。
なお、現時点ではPhenom 9900も、Phenom 9700も、正式な価格を明らかになっていないが、AMDによれば1000個ロット時の価格で、Phenom 9900は350ドル以下、Phenom 9700は300ドル以下で投入する予定であることを明らかにしている。なお、同クロックのCore 2 Quad Q6700の2007年12月におけるリファレンス価格が1000個ロット時の価格で530ドル、同 Q6600が266ドルだ。インテルが価格改定をしなければ、Phenom 9900と同 9700は十分競争力を持つ製品になりうるだろう。
絶対的なパフォーマンスについては、いろいろと評価が分かれるPhenomであるが、価格競争力は十分に持っているといえる。故に、2007年12月の時点で市場に投入されていれば、AMDプラットフォームにもかなり活気がでてくるのではないだろうか。そう考えると、今のAMDに求められているのは、製品を“タイム ツー マーケット”で市場にリリースすることではないだろうか。
2007年12月13日に米国ニューヨークで行われたAMD Financial Analyst Dayで、AMD コンピューティング ソリューションズ グループ担当上級副社長のマリオ・リバス氏のプレゼンテーションで、サーバも含めたクアッドコアの現状に対して「AMDもクアッドコアのパフォーマンスにハッピーではない。何より顧客を失望させてしまったことを残念に感じている」と、AMDとしても現状に満足していないことを正直に述べている。
おそらく多くのAMDユーザーも同じ気持ちだと思うが、AMDも謙虚にこの点は認めて状況を改善しようとしている。「AMDはすでにほとんど問題を解決し、そうした状況も改善するだろう」(リバス氏)という言葉を信じてAMDの反撃を待ちたい。
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