6月24日、iPhoneの歴史に新たな1ページが加わる。
2008年の「iPhone 3G」の日本上陸から約2年。Appleの開発者向けイベントWWDC10で発表された「iPhone 4」が、いよいよアップル直営店(アップルストア)や一部のソフトバンクショップで発売される。既報のとおり、このiPhone 4は発売前から爆発的な人気となっており、世界中で予約が殺到。日本でもiPhone 4への注目度は高い。ある大手販売会社幹部は「予約の申し込みや問い合わせの多さは、過去に類を見ない」と話す。ホワイトモデルが発売時期未定のため一定の需要分散はあるだろうが、それでも当面はiPhone 4が入手しづらい状況が続きそうだ。
筆者は先のWWDC会場において、このiPhone 4とiOS 4を体験。そして今回、改めてiPhone 4をじっくりと試す機会に恵まれた。
iPhone 4はケータイユーザーにとって、どこが注目で、どれだけ魅力的なのか。そして、日本市場にどれほどのインパクトがあるのか。実際に日本で触れてみたiPhone 4のリポートを交えながら、考えてみたい。
WWDCで初めてiPhone 4に触れた時、筆者が驚かされたのが、その優れたデザインと質感の高さだった。そして、再びiPhone 4を手にした今、その驚きは空恐ろしさにも似た印象になっている。
神は細部に宿る。その極地をiPhone 4は実現している。実際のところ、写真で見るよりも実物はもっといい。アルミノケイ酸ガラスと、本体外周を覆うアンテナ兼用の金属パーツという組み合わせは、シンプルでありながらとても高級感があり質感が高い。子細に見れば、ボタンやスイッチ、カメラ、スピーカー/マイクなど1つ1つの部分が、とても丹念にデザインされていることが分かる。
細部へのこだわりを象徴的に現しているのがMicro SIMカードのスロット部分だ。従来どおり、専用ピンでMicro SIMカードを取り出すと、ガイドレール部分までもが外周部と同じ金属で作られていた。多くのユーザーが“見ない場所”まで、手抜かりなく、美しくデザインしているのだ。
そして、この美しさは単に所有欲を満足させるだけでなく、使いやすさや機能性にも密接に結びついている。
まず、2枚のアルミノケイ酸ガラスと金属パーツの採用、そして省スペース性に優れたApple独自開発のA4プロセッサとMicro SIMの導入により、iPhone 4はボディが先代のiPhone 3GSよりもスリムかつコンパクトになった。特に厚さと横幅の減少効果は大きく、これによって手の小さな女性でも持ちやすくなったのだ。日本では女性に受け入れられるケータイは横幅50ミリ以下が望ましいとされてきた。iPhone 4はそれに対して横幅で8.6ミリオーバーしているものの、厚さが9.3ミリと薄いため、持ちやすさはケータイと変わらなくなっている。
一方で、両面がガラス製でフラットなパネル型のフォルムは、触ったときの質感は高いものの、滑りやすい印象を受ける。確かにガラス面だけを濡れた手などで触るとツルっと滑りやすいのだが、サイドの金属パーツ部の段差がいい具合に“滑り止め”の役割を果たし、持ちやすさは先代よりも向上している。外周部の金属パーツは、デザイン上のアクセントになっているだけでなく、受信感度をよくするためのアンテナであり、持ちやすさを向上させるパーツでもあるなど、さまざまな機能も併せ持っているのだ。
iPhone 4を実際に手にして、デザインや質感を見ると、Appleの「モノ作り」の力が飛躍的に向上していることが分かる。これまでもAppleのデザインセンスのよさには定評があったが、ケータイの小型化や質感の高さ、さまざまな素材を組み合わせて実装する技術は、日本メーカーのお家芸だと思われてきた。しかし、iPhone 4はデザインのセンスだけでなく、質感の高さや小型化、内部構造や機能部品の合理的かつ高精度な実装といった点でも、他のケータイやスマートフォンを超えている。また、これはデザインと直接関係ないが、iPhone 4ではカメラや液晶パネル、モーションセンサーなどで、現時点で量産品に利用できる高級デバイスが惜しげもなく組み込まれている。まるで日本の匠の技のように、細部まで妥協せず、こだわりのあるモノ作りを実践している。店頭で並んでいるiPhone 4を見て触るだけで、多くの人がそのデザインと質感の高さに魅了されるはずだ。
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