NVIDIA“一強”を突き崩すか AMDのAIソフトウェア「ROCm」と次世代GPU「Instinct MI400」がもたらす新たな選択肢(1/2 ページ)

» 2026年05月12日 17時00分 公開

 AMDが、シンガポールで報道関係者向けイベントを開催した。4月に行われたこのイベントでは、同社のGPUアクセラレーター「AMD Instinct」シリーズやAIエコシステム「ROCm(ロッケム)」のロードマップなど、エンタープライズAIに関する取り組みが担当者から解説された。

 同社のシンガポール拠点は元々、半導体の大量生産を行う場所の1つに過ぎなかったが、過去15年間にわたる事業変革の結果、研究開発(R&D)とエンジニアリングの中核拠点に変貌を遂げた。現時点において、同拠点の従業員の9割近くがエンジニアリングに従事し、残りの1割ほどがビジネスサービス要員だという。

 今回、AMDが“わざわざ”シンガポールで説明会を開催したのは、自社がAI全盛時代に何を行い、グローバル市場においてどのような位置付けにあるのかを示すと共に、その最新の取り組みの一端を紹介することで、エンドユーザーにどのようなメリットがもたらされるのかを示す狙いがある。

 R&D拠点としての話は後日行うとして、この記事ではInstinctシリーズとROCmの現状とこれからについてまとめる。

3つの拠点 AMDはシンガポールに3カ所の拠点を構えており、そのうちの1つは買収したXilinx(ザイリンクス)が保有していたものだ
エル・サラバナン氏 シンガポール拠点に関する説明を担当した、AMDのエル・サラバナン氏(シンガポール カントリーリーダー)

2026年内に次世代「Instinct MI400」を投入へ

 AMD Instinctシリーズの最新ロードマップは、同シリーズのチーフアーキテクトを務めるアラン・スミス氏が説明した。

 Instinctシリーズでは、基本的に新製品を毎年投入している。これはユーザーが性能向上のメリットを体感しやすくするための仕掛けとなっている。現行の最新モデルはCDNA 4アーキテクチャを採用する「Instinct MI350」シリーズで、2023年モデルである「Instinct MI300X」シリーズと比較するとAI推論と学習共に最大で約3倍のパフォーマンスを実現しているという。

 性能比較ではライバルのNVIDIA製品との比較も行われているが、先方の現行モデルとの比較でも遜色ない性能を実現していると、スミス氏は主張する。

ロードマップ Instinctシリーズの製品ロードマップ。現在は2026年をターゲットに「Instinct MI400」シリーズの提供準備が進んでいる
チップレットアーキテクチャ Instinct MI350シリーズのチップレット・アーキテクチャの説明
推論での比較 Instinct MI355XのAI推論パフォーマンスを、Instinct MI300Xや競合のNVIDIA B200/B300(Blackwellアーキテクチャ)と比較したグラフ
学習 こちらはInstinct MI355XのAI学習パフォーマンスを、Instinct MI300Xや競合のNVIDIA B200/B300(Blackwellアーキテクチャ)と比較したグラフ

 2026年から2027年にかけて投入される、最新の「Instinct MI400」シリーズでは、パフォーマンスやメモリの容量/性能がさらに向上し、AIインフラに将来求められる“さらなる処理能力”を提供できるという。

 GPUアーキテクチャは「CDNA 5」となり、広帯域メモリ(HBM3E)を採用するグラフィックスメモリの帯域幅は毎秒8TBから19.6TBと、2倍以上となる。グラフィックスメモリの容量が1基当たり288GBから432GBと大きく増える。

 「Instinct MI455X」を72基搭載したラックマウントシステム「AMD Helios」と、NVIDIAのラックマウントシステム「Vera Rubin」との比較では、搭載メモリ容量が1.5倍、スケールアウト時の帯域幅も1.5倍と、優位に立つという。

 Heliosは2026年後半に複数のODM/OEMを通して提供が始まる予定で、データセンター向けのソリューションでNVIDIAと“大々的に”勝負することになる。

MI400シリーズ Instinct MI400シリーズは、現時点では「Instinct MI430X」と、その上位製品として「Instinct MI455X」の2製品が用意される予定となっている
Helios Instinct MI455Xを72基搭載した「AMD Helios」は、競合の「NVIDIA Vera Rubin」と“真っ正面”から競合することになる

 AMDが強みとしているのは、CPU/GPUを始めとする半導体のチップからHeliosのような一貫した統合システム、そして後述のソフトウェアソリューションであるROCmまで一貫して提供できる点にある。特にROCmについてはオープン戦略を採用し、開発者コミュニティーを積極的に展開している。

 同社としては、実質的にNVIDIAの「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」が絶大な影響力をもたらしているAIシステムの世界において、これらの取り組みが“突破口”となることを期待しているようだ。

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