「育児で絶望のどん底にいた」母が漫画ブログから得たモノ――悩みを表現に変える方法(1/2 ページ)

» 2016年06月13日 06時00分 公開
[鈴木美雪ITmedia]

 2月に「保育園落ちた日本死ね」と題した匿名のブログ記事が大きな注目を集めた。政府が掲げる「1億総活躍社会」のスローガンとは裏腹に、なかなか解消しない待機児童の問題、子育ての大変さが分かっていない国の施策に、ネット上では同じことを考えていた親の世代から共感の声が爆発した。

 子供を産み育てる最初の期間、何かの支援や協力なしには、親は活躍できないという意識が当事者たちにも世間にもある。

 特に母親たちは、子供が幼稚園や保育園へ入るまでは、自由な時間を積極的に持ったり、職場へ復帰したりする余裕がない。国の子育て支援に歯がゆい思いを感じつつ、子育ての大変さやつらさに明け暮れる親も多くいることだろう。

 今回は「子育てがつらい」「心の余裕がない」「子供との向き合い方が分からない」そんな悩みを抱えていた1人の親が、ブログで漫画を描くことで、悩みを解消できた話を紹介したい。

漫画ブログを運営中のイメトモさん

育児 漫画 マンガ ブログ (画像はイメトモさんの育児漫画ブログ「やめて!ハハのライフはもうゼロよ!」より)

 取材に応えてくれたのは子育て漫画ブログ「やめて!ハハのライフはもうゼロよ!」を運営するイメトモさん。「我が家のダンスィたちとの子育て奮闘記」とキャッチフレーズがつけられたイメトモさんのブログには、息子たちのクスッと笑えるかけあいや、プッと吹き出してしまうような子育てエピソードが漫画で盛りだくさんに紹介されている。

絶望のどん底だった1年前

 平日はブログを毎日更新していると話すイメトモさん。順調そうに見えるが、1年前は本当に大変だったという。

 「ちょうど1年前がどん底に大変で、子育てに疲れていました。2人の息子が大きくなってきて、人格が出てきたんです。騒がしくなると、人に注意されたり、どうしてもまわりの目を気にしてしまう。結果、息子と自分だけで家に固まるように過ごしていました」(イメトモさん)

 息子たちのパワーが炸裂(さくれつ)し始めたのは、下の子が3歳の誕生日を迎えた頃だという。2人がそろうと騒がしさは2倍どころか20倍に膨れ上がったとのこと。叱っても伝わらず、注意しても聞かず、制御ができないため「買い物にも連れて行くことができなかった」とイメトモさんは話す。

 「主人も仕事が忙しく、私が息子たちにきつく当たるようになってしまったんです。以前は虐待のニュースをテレビで観るたび『虐待するなんてこの人、人間じゃない!』と思っていましたが、子育てをする側になって初めて『親でも、精神的につらくなるときあるよね……』と気付きました。息子を傷つけてしまう、これじゃダメだと思っているのにどうしようもならないと悩んでいた矢先、たまたま市がやっている無料の子育てセミナーに参加したんです」(イメトモさん)

「私が、漫画家だったらなぁ」

 当日わらにもすがる思いで、セミナーに行ったイメトモさん。セミナーは元保育士さんの相談会みたいなもので「自分の子供の良さ」についてそれぞれの親が端から順々に答えていった。

 しかし、なぜか息子たちの良さが1つも浮かばない自分に愕然(がくぜん)とした。兄弟で比べるとそれぞれに良さはあるが、他の子と比べるとどうやっても言葉にすることができなかった。そうこうしている間に次男がセミナー会場を抜け出し、追いかけているうちにセミナーが終わってしまった。

 結局、息子たちの良いところは思い浮かばず、順番は抜かされ、発表する機会もなく、イメトモさんは落ち込んで帰宅した。

 「外に出たいという気持ちはありました。ただ、パートに出ても夫婦共、両親が近くにいないので、この状態では職場にも迷惑が掛かると思うと踏ん切りがなかなかつかず……セミナーから帰った晩に“私が、漫画家だったらなぁ。育児漫画が描けたら、ネタに困らないよね”と主人に愚痴を言ったんです」(イメトモさん)

 「じゃあ、漫画ブログやってみようよ!」

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