2017年のPC・タブレット動向を冷静に振り返る本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)

» 2017年12月28日 10時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 2017年、僕としては27年ぶりの出来事があった。それは新しいPCを1台も購入しなかったということだ。

 コンピューティングへの興味を失ったわけではない。またPCの進化が止まったとも思っていない。使用するアプリケーションに対し、性能が十分と感じられるようになったのは随分前のことだから、理由は性能以外である。しかし、意識していたわけではないため、かなり個人的にはショックというよりも不思議な感覚だ。

 しかし、消費者の視点でみれば、やっとPCも「普通の商品になってきた」という感覚かもしれない。そもそも、短期間で買い換えることが当たり前だった機器の方が珍しい。PCの件に転換するならば、この現象は結局のところ、PCという商品そのものが成熟したジャンルになってきたということなのだと思う。

 それは「ThinkPad」の25周年をグローバルで祝った横浜でのパーティーでも感じた。日本で生まれたThinkPadがLenovoに売却後も独自のカルチャーを持つブランドとして残っていることは、PC業界に少しでも関わってきたものとして喜ばしい。そんな気持ちを持ってイベントに参加した。

 しかし温故知新ではないが、記念モデルとして投入されたモデル「ThinkPad 25」は、ThinkPadをかつて象徴していたレイアウトのキーボードが一番の特徴だった。もちろん、それはそれで素晴らしいことなのだが、個人的には「PCという道具の枠組み」をあらためて確認した思いでやや寂しい気もした。

ThinkPad 25 ThinkPadの25周年記念モデル「ThinkPad 25」。現在主流のアイソレーションキーボードではなく、従来型の7列キーボードをあえて復刻したことでPCユーザーの注目を集めた

 とはいえ、それだけ完成されたジャンルとも言える。「PCという製品のカタチはとっくの昔に定まっているではないか」と言われるかもしれないが、それでも従来は毎年のように何かが起きていた。

 そうした意味では、後は腰を落ち着けて道具としての完成度、品質を追求するか、あるいは価格を追求するかという方向なのか、恐らくは後者にかなり寄ってくることになると思う。が、前者の製品もApple、Microsoft、Lenovoあたりが追求してくれることを願いたい。

タブレットの位置付けを見直してきたApple

 一方で「コンピューティング」の未来は、まだまだ可能性を多く残している。PCという商品を軸に考えれば、もはや成長ジャンルではないが、パーソナルなコンピューティング環境という視点で思うところを書いてみた。

 2017年のトレンドとしては、前年に引き続いてタブレットデバイス市場の変質が挙げられる。企業ユースや特定市場でのタブレット活用は進んでいるが、コンシューマー製品としてのタブレットデバイスは、その用途などに調整が必要というのが業界の共通認識だろう。

 それはこのジャンルを開拓してきたAppleの動きからも分かる。Appleは「iPad」を最新技術を詰め込んだ先端デバイスの位置付けからいったん外し、よりカジュアルなデバイスに位置付けた。現行のiPadはスペックや画質、操作性を究極まで追求するのではなく、コストパフォーマンスのよいバランスポイントを狙った製品と言える。

 これはこれで、iPadを用いたB2Bユースやリビングルームなどで子どもも交えてカジュアルに使いこなすデバイスとしてのニーズを捉えている。ただし、今の流れはそうした使い方をしたい利用者が、実はさほど多くないのではないか(故に市場が伸びない)ということが分かり、位置付けを調整してきた。

 「ではどうするのか」に対する答えが、「iPad Pro」ということだ。現在のiPad Proは、PCやMacを基準にしたとき、同等の生産性をもたらしているとは言えない面もある。しかし、「iOS 11」ではかなりPC的な使い方に寄せてきているので、今後さらに利用者からの要望をユーザーインタフェースやハードウェア設計に反映していけば、Windows PCやMacの用途をさらに取り込んでいくことは可能だろう。

iPad Pro Appleが6月に発表した10.5型の「iPad Pro」。「iOS 11」との組み合わせで、よりPC(Mac)的な使い方が可能になった。専用キーボードカバーの「Smart Keyboard」には日本語キーボードも加わっている

 Appleの視点では、それはMacとのカニバライゼーションとなるだろうが、もともとMacは日常的な情報ツールというよりはデジタル世界でのクリエイティブツールとしての性格が強かった。そうした意味では、モバイル用途のPCをより多く取り込んでいく側面が強い。iOSの領域ではAppleが自社の強みを出しやすいことも考え合わせると、実に堅実というか、王道を行く戦略だと思う。

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