―― ASUSが法人向けPC事業で重視するのはどんな点ですか。
シー 法人向けPC事業を支える柱は、「AI」「品質」「信頼」の3点だと考えています。
当社は、日本のビジネスプロフェッショナルから最も信頼されるパートナーとなり、高品質で耐久性に優れたAI時代に最適なソリューションを提供していくつもりです。
今回、日本市場に投入したExpertBook Ultraは、現代のプロフェッショナルのために設計した法人向けノートPCであり、ASUS最高峰のAIビジネスノートPCと位置付けています。
日本市場は、当社にとって世界有数の法人市場へと成長する可能性があると確信しています。当社が掲げている目標は、日本のプロフェッショナルと企業にとって、最も選ばれるブランドになることです。
そのために日本市場へのコミットメントを、さらに強化していきます。革新的な製品と強固なエコシステムを通じて、日本のDXとAI活用を、さらに発展させることを支援します。日本の次なるイノベーションの未来を切り拓くべく、パートナーやお客さま、地域社会と一緒になって、よりスマートで革新的な日本の未来を創り上げていけると確信しています。
日本という特別な市場で培った技術やノウハウは、他の市場にも展開することができますし、法人向けPCだけでなく、他のセグメントにも応用が可能です。また、IntelのCEOやチーフアーキテクトとも緊密に連携を図ることで、CPUのデザインに対しても、私たちの要望を具体的に示して、改善してもらうといったことをしていますし、これは、CPUだけでなく、1つ1つの部材に対しても、同様のことを行っています。
AI時代になり、PCに求められる要素が変化してきています。これは、全ての部材を進化させていかなくてはならない時期に入ってきているともいえます。私自身も、AIを使うという観点での学びにとどまらず、AIに関する論文を読み、AIを支える物理理論や数学理論を、基礎から学び直しているところです。
基礎を学ぶというのはエンジニアリングの基礎です。米国や中国では、さまざまなAIモデルが登場し、多くの論文が発表されています。これを読みふけるのはとても楽しい作業です(笑)。
また、私は、トップエンジニアを集めた「ダルマラボ(Dharma Lab)」をリードしており、それらを通じて、最先端の技術を、いかにPCに生かすかといったことにも取り組んでいます。基礎を学び直し、知識を深掘りすることで、AI時代における新たなExtreme EngineeringおよびDesign Thinkingを追求していきたいと考えています。
―― エンジニア出身のシー会長から見て、今の20代などの若いエンジニア、あるいは学生がやっておくべきこととは何だといえますか。
シー 私が、台湾大学の学生だったときにPCが登場し、それを教授から解析するように言われました。その時は、PCがどういう構造になっているのかも知らない状態でした。しかし、そのときの経験が、今につながっています。
基礎となる理論が書かれた文献を何十回も読み返し、自分でハードウェアを分解し、リバースエンジニアリングを行うことを何度も繰り返してきました。電子回路から発生する熱が、どう影響するのかということについても1つ1つ学びました。
また、電子回路を学ぶだけでなく、ソフトウェアを学ぶことも大切だと考え、MS-DOSやWindowsだけでなく、UNIXやLinuxも勉強しました。こういった積み重ねを繰り返すことで、初めて新たな製品を生みだすことができます。
これは、AIの時代でも変わりません。
今の若い人たちにとって、AIを使わないという選択肢はありません。AIを使わなければ取り残されるのは明らかであり、AIを使う人が、AIを使わない人に置き換わっていきます。そして、これは、学び方が大きく変わることも意味します。
AIは革命ではありますが、AIの力を発揮させるのは、結局は人です。AIの使い方を学ぶことはもちろん、AIを使い続けることを前提にした学びというものを身に付ける必要があります。
かつて、多くの人がプログラムすることが可能になったとき、ソフトウェアが一気に広がり、大きな革命が起きたと言われました。ただ、これらのソフトウェアは、人がコードを書き、メンテナンスを繰り返してアップデートし、多くの手間をかけていました。
しかも、一度書かれたプログラムは、固定したルールベースの運用になるため、それが残り続け、進化に制限があるという課題もありました。今ではAIがコードを生成し、しかも何千人で取り組んでも追いつかないほどの短時間で書き上げてしまう時代となりました。
そしてAIは常に学習し、環境に合わせてパラメーターを変更したり、ルールそのものを自ら変えたりすることができます。Anthropicでは、半年間にわたってAIだけでコードを書いたところ、バグは1つも発見されなかったといっています。
人の作業ではできないこと、長年にわたり成し遂げられないことをAIは可能にしているのです。人の仕事が、AIに置き換わり始めているのは明らかです。実際、AIの登場によって既存のソフトウェア企業は成り立たず、それが懸念されて、ソフトウェア企業の株価が下落するといった事態が起きています。
コンピュータの登場が第3次産業革命であれば、AIの登場は第4次産業革命といえます。そして、今後はAIエージェントが普及することになります。そうなると、今までのPCとは、全く異なるPCが登場することになると考えられます。
これまではクラウドの活用によって、クライアントを「軽く」するという動きでしたが、ローカルでAIを活用するようになると、クライアントそのものに高い性能が求められ、「重たい」PCが必要になります。高い性能を持ったPCで、対話型で動作する複数のAIエージェントを稼働させ、業務のPDCAを回すことになります。
AIの登場によって、PC市場は大きな転換期を迎えています。これはシェアを拡大できるチャンスであるともいえます。数多くのAIエージェントが快適に動くPCが求められるのは明らかです。この新たな市場において、PCメーカーのシェアも変化することになるでしょう。
既に1日に行う数十種類の仕事をこなすために、100以上のAIエージェントを稼働させ、それぞれが10個以上のジョブを走らせるといった使い方をしている人がいます。
これが近い将来には一般的な使い方になってきます。こういった使い方に対応できるPCが、これから求められてきます。ローカルで処理するだけでなく、ローカルに頭脳を置くことが大切になり、さらにデータを保存し、プライバシーやセキュリティにも配慮したものが求められます。当社は、そうしたニーズに耐えうるPCを作っていきます。
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