水面下で進むスマホOSの世代交代――「第3のOS」の陰で、見過ごせないGoogleの動き(2/3 ページ)

» 2013年04月25日 11時00分 公開
[小林雅一(KDDI総研),ITmedia]
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 そう考える理由は2つある。1つは、2008年にスマホブームが訪れて以来、この5年間でGoogleにとっての脅威がAppleからSamsungへと移り変わったことだ。つまりAndroidは、Apple(iPhone)を叩くには有効な武器だったが、Samsungには通用しない。SamsungはむしろAndroid搭載端末をたくさん売って大儲けすることで、Googleに対する脅威になってしまった。Googleにしてみれば、これ以上Androidを改良して、Samsungを喜ばせる理由は全くない。

 2つ目の理由は、AndroidよりもChrome OSの方がGoogleの企業哲学にフィットするからだ。それは「全ての情報処理をWeb上で行う」という考え方で、Chrome OSはまさにこの基本理念に沿って設計されている。とはいえ、そうした情報処理のスタイルは「ICT産業のパラダイム・チェンジ」と呼べるほど大胆な方向転換なので、いかにGoogleといえども、そう簡単に成し遂げられることではない。

 しかし最大のライバルであるAppleの株価が急落し、その力に陰りが見えた今、Googleは前方に視線を向けても、その足を仇敵にすくわれる危険性が薄れた。だから思い切って今、この難しい課題にチャレンジすることにした――。筆者はそう見ている。

Firefox OSとChrome OSは新世代のOS

 さて、ここで注意すべき点は、前述した「第3のモバイルOS」がGoogleの「Chrome OS」(あるいは次世代Android)と非常に良く似たものであることだ。特にFirefox OSとChrome OSは、共に「HTML5」と呼ばれる次世代Web技術に特化しており、従来のブラウザとOSが一体化した基本ソフトだ。これらはまさしく「全ての情報処理(仕事)をWeb上で行う」ために開発された「新世代のモバイルOS」と見ることができる(もう一方のTizenは、HTML5とネイティブアプリの両方に対応するという点で、旧世代と新世代の中間に位置する)。

 これらが登場してきた背景には、先進諸国におけるインターネット接続環境の充実がある。例えば韓国ソウルや東京では、今や地下鉄全線からインターネットに常時接続できる。こうしたトレンドはいずれ全世界に波及し、どこからでも、どんな端末からでもインターネットに接続できるのが当たり前の時代になる。そこでは「最初からインターネットにつながっていることを前提に設計されたモバイルOS」が必要とされる。それがFirefox OSやChrome OSなど「新世代のOS」なのだ。

 この記事の前半で、日本の端末メーカー関係者が「(Firefox OSやTizenなど)第3のモバイルOSと、Androidの違いが分からない」と言っていることを紹介した。確かに、それらが搭載された端末を見本市でちょっと手にとって見る程度では、その違いは理解できない。しかし(Tizenはとにかく)Firefox OSのような新世代のモバイルOSは構造的に旧世代とは全く異なっており、それはユーザーが使いこむうちに、いずれは大きなメリットとして理解してもらえることなのだ。

Photo Firefox OS端末(ZTE製)の外観とUI。従来からあるスマートフォンと何ら代わりはないようにみえる

 例えば次のようなケースである。

 ごく近い将来、ビジネスパーソンが会社のPCでやりかけた仕事が、地下鉄に乗ってタブレットを起動した瞬間に再現され、その場で仕事を再開。電車を降りたときには、客先への企画書が完成している。あるいは家のゲーム機で遊んでいた子供が、パパの自動車に乗ったとき、後部座席のスクリーンから、さっき中断したゲームを再開する――といったことが可能になる。

 つまり、従来とは比較にならないほどシームレスで快適なクラウドコンピューティングが実現されるが、そのためにはFirefox OSやChrome OSのような、「最初からネットに接続していることを前提に設計された新世代OS」が必要とされるのだ。

最新のWeb技術ではオフラインでも仕事ができる

 MozillaやGoogleはそうした社会の到来を見据え、そちらに向かって進み始めた。もっとも読者の中には、「それは少し、先走ってはいないか」と訝る向きもあろう。なぜならソウルや東京のようなネットへの常時接続環境は、世界全体の中ではまだ例外的な存在であるからだ。実際、中国やアフリカ、南米など新興諸国はおろか、恐らくニューヨークのような先進都市圏でも、まだそれほどのネット環境は実現されていない。そうした中で、「全ての仕事をWebでこなすためのモバイルOS」は時期尚早ではないか、と。

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