飲料メーカーは、輪番停止や、LED照明の導入などで自動販売機の消費電力量削減に努めてきた。日本コカ・コーラは、日中に冷却運転を停止しても飲料の冷たさを保持できる自動販売機を開発し、ピークシフト運転の試験を始める。試験の場所として選んだのは、日本でも有数の猛暑地帯だ。
日本コカ・コーラは2012年7月2日より、新開発の飲料自動販売機「A011号機」の試験運用を始める(図1)。期間はおよそ2カ月。A011号機は、富士電機とその子会社である富士電機リテイルシステムズと共同で開発したもので、日中に冷却運転を長時間停止させても、飲料の冷たさを保持できるという。夜間に飲料を冷やしておき、日中は冷却せずに済ませる「ピークシフト」が可能になる。
既存の自動販売機は、販売状況に応じて収容している製品の一部だけを冷却している。当然、冷却運転を停止させると庫内の温度が少しずつ上昇し、冷却した製品もぬるくなってしまう。
今回試験導入する「A001号機」ではまず、運転方法を見直した。収容した飲料全品を夜間に冷却するようにしたのだ。さらに、断熱材として真空断熱材を採用した。真空断熱材は、既存の飲料自動販売機が断熱材として利用している発泡ウレタンと比較して、およそ10倍の断熱性能を発揮する。日中に冷却運転を停止させても、真空断熱材の効果により庫内の温度上昇を抑えられるということだ。
夜間に庫内の全品を冷却し、日中は真空断熱材の力で冷気を極力逃がさないようにすることで、最長で16時間冷却を停止しても冷気を維持できるようになったという(図2)。
日本コカ・コーラは、A001号機の試験運用の場所として埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市を選んだ。どちらも猛暑で有名な都市だ。日本で最も自動販売機に厳しい環境で試験を実施することで、真の実力を見極めようという狙いがあると見られる。
なお同社は2012年7月2日〜9月30日までの間、自動販売機の冷却運転スケジュールを変更し、ピーク時間帯の消費電力量を2010年夏と比較して15%削減することを目指している。対象は沖縄県と東日本大震災被災地を除く日本全国。具体的には、自動販売機を6つのグループに分け、グループごとに冷却運転を輪番で停止させる。さらに、13〜16時の3時間はすべての自動販売機の冷却運転を停止させる。
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