夏の節電では、需要が最も集中する時間帯の電力消費量を抑えることが最も重要なポイントとなる。この時間帯の消費電力量が電力会社の供給可能な量を超えてしまうと大規模停電などの事故につながるからだ。また、この時間帯に節電して「デマンド値」を抑えると電力にかかるコストを大きく削減できる。
デマンド値とは、月単位や年単位の消費電力量の推移を見たときに、最も電力を消費している時間帯の消費電力量を指す。暑い夏の日は、気温が上昇するペースに合わせて、空調機器が消費する電力量が上がる。ほとんどの場合、デマンド値はこの時間帯の消費電力量となる。
今夏のように電力会社各社の最大電力供給量に不安がある夏には、電力会社は特に強く節電を呼びかける。電力会社は需要が殺到したからといって、際限なく電力を供給できるわけではない。電力会社が供給可能な最大電力量を需要が超えてしまうと大規模停電などの事故につながる。
このような事態に至ることを避けるため、電力会社は特に需要が殺到しそうな時間帯を予測して、節電を呼びかける。つまり、夏の節電では各需要家がデマンド値を抑えることが最も重要なポイントとなる。
電力を消費する需要家側も、ある程度このような事情を理解して夏の節電を「協力」ととらえている部分もある。しかし、デマンド値の抑制は需要家にメリットをもたらすということを忘れてはいけない。
500kW未満の高圧受電契約を結んでいる場合、デマンド値によってその後1年間の基本料金が決まってしまう。つまり、夏に電力を無駄遣いすると、そのツケを1年間にわたって払い続けなければならないのだ。
一般に日本の電力会社は、30分単位で電力消費量の平均値を求め、過去11カ月の最大値と比較して大きい方の値をデマンド値とし、基本料金を決める。デマンド値を抑える方法としては、消費電力量を監視し、一定値を超えたところで警報を鳴らす「デマンドコントローラ」という機器を利用する方法や、電力の見える化システムを導入して、消費電力量を監視する方法、BEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を導入して、自動的にデマンドを抑えるという方法などがある。
経済産業省は現在、契約電力が50kW以上500kW未満のビルを対象にBEMSの導入を促進する「BEMSアグリゲータ」制度を実施している。この制度は、BEMSの機能を利用して中小ビルのデマンドを抑え、電力会社の最大供給量を超える需要が発生することを防ぐということを目的の1つとしている。
BEMSというと、それまでは大規模なビルに向けた高価なシステムが多かったが、BEMSアグリゲータに選定された企業が提供するBEMSの中には、比較的安価なものもある。さらに、この制度を利用してBEMSを導入すると、導入にかかった費用の1/2もしくは1/3の補助を受けられる。
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高くなる電気料金を削減へ、メニュー見直しとピーク制御が効果的
東京電力が電気料金を値上げしたことで、企業や自治体、マンションの管理組合でも対応策に追われている。ところが電気料金の仕組みは意外に知られていない。正確に理解して最適なコスト削減策を講じる必要がある。
2012年3月までの実績値をもとに、東日本大震災後の1年間にわたる電力需要の傾向を見ると、全国の合計では1月が最大で、夏よりも冬の電力需要のほうが大きい。特に家庭向けで冬の電力需要が増えた。
最近まで多くの企業では、電気代は事業運営に不可欠な“必要経費”との認識が強かった。しかし今後の電力事情を考えると、電気料金は継続的に値上げされていく可能性がある。電力を安く有効に活用するための基本的な問題をシリーズで解説する。
企業が電力会社に支払う電気料金は、30分ごとに計測される電力使用量の最大値によって変動する。その最大値を抑えるための装置が「デマンドコントローラ」で、電気料金を引き下げるための有効な手段として注目を集めている。
電力需要が増加する夏を前に、多くの企業で節電対策が急ピッチに進んでいる。毎日の電力使用量をきめ細かく管理しながら抑制するためには、コンピュータを使ったBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)が最も有効な手段になる。
BEMSアグリゲータ21社の79製品、小規模から中規模のビル向けが大半
4月末に発表されたBEMSアグリゲータ21社の補助金対象製品を、管理できる空調の数によって分類してみた。空調の管理数が2〜10の小規模から中規模のビルを対象にした製品が多い。
電力需要のピークをまとめて削減、BEMSアグリゲータ3社が共同で新サービス
東京電力が今夏の電力需要を削減するために、5種類の新サービスを複数の企業と共同で開始することを発表した。その一環で中小企業向けの「ピーク需要抑制シナジー事業」を日立製作所など3社と7月1日から実施する。
ビルの節電対策を夏までに、BEMSアグリゲータの21社が5月から始動
総額300億円の補助金を活用したビルの節電対策が本格的に始まろうとしている。補助金の対象になるBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を提供できるアグリゲータ21社の製品と価格が4月27日の夜に発表された。
昨夏に東京電力と東北電力の管内で設定された節電目標15%をBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を駆使してクリアした企業がある。ボウリングなどのレジャー施設を展開するラウンドワンだ。今夏は西日本の店舗にもBEMSを拡大して15%の節電に取り組む。
電力需要の増加が予想された8月前半だったが、直前の7月後半と比べて伸びはほとんど見られず、むしろ需給率は低めに推移した。東日本では最大需要電力が減る一方、西日本では増加傾向が見られた。需給率の最高値は7日(火)の中部電力で91.5%だった。
節電によるコスト削減に取り組む企業が続々とBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)の導入に着手している。国の補助金が本格的に始まり、安価に導入できる製品やサービスが増えてきたためだ。
政府による節電要請期間に入り、空調機器の設定温度を28℃に設定する、会議室の照明をこまめに消す、エレベーターをなるべく使わないなどの節電策を打っている企業も多いはずだ。しかし、それぞれの対策にはどれほどの効果があるのだろうか? 本当にそこまで苦しい思いをしなければならないのだろうか? 「電力の見える化」を実行すればその答えが見える。
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