“スマートタップ”を賢く使って、小規模オフィスでも簡単に節電エネルギー管理(1/2 ページ)

節電のためにBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)や電力の見える化システムなどといった機器を導入する企業が増えている。しかし、ビルの1フロア、あるいは1室だけという規模の中小企業では、BEMSなどの機器は導入しにくい。そこで役に立つのが「スマートタップ」だ。

» 2012年08月24日 09時15分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 「スマートタップ」とは、コンセントと電気機器の間に接続することで、コンセントにつながっている機器が消費している電力量を計測する機能を持つ機器だ。「スマートコンセント」と呼ぶこともある。

 節電のためにBEMSや電力の見える化システムといった機器を導入しようと思ってもなかなか難しいということもある。BEMSや、電力の見える化システムといった機器は基本的にはビル単位で導入するものだ。自社ビルで営業している企業なら、このような機器の導入も進めやすいが、オフィスビルの1フロア、または1室だけといった中小企業は自身の判断だけで導入することはできない。基本的にはBEMSなどの機器はビルオーナーが導入を決断するものだ。

 一方、スマートタップなら中小企業でも自由に導入できる。コンセントと機器の間に接続するだけだから、特別な工事も必要ない。節電にはまず、現状で消費している電力量を把握することが大切だ。これだけなら、スマートタップでも十分役に立つ。把握した結果を基に立てた節電対策の効果の計測にも大きな力を発揮する。

 本稿では、中小規模オフィスの節電対策に役立つスマートタップ3種類を紹介し、それぞれの簡単な使い方を説明する。

データは無線で送信

 最初に紹介するのは英Plugwise社の「Sting(スティング)」という製品だ(図1)。この製品はつながっている電気機器の消費電力量を計測し、そのデータを「Zigbee」という方式の無線通信でパソコンに送信する。受信するパソコンには受信用のスティックをパソコンのUSB端子に接続する。

図1 英Plugwise社のSting。右側にあるのはデータを受信するスティック。パソコンのUSB端子に接続して使う

 Stingを使うときは図2のように機器を配置する。基本的には電気製品とStingを接続し、コンセントに差し込めばよい。ただし、すべてのStingは中継機能を持つ「Sting+(スティング・プラス)」にデータを送信し、スティックはSting+と1対1で通信するということを頭に入れておいてほしい。この関係を理解していないと機器の配置で失敗することがあるからだ。

図2 StingはデータをSting+に送信し、Sting+がすべてのデータをまとめてスティックに送信する

 機器を配置するときは、StingをSting+の半径10m以内に配置することと、Sting+をスティックの半径5m以内に配置するように注意しよう。実際はもっと長い間隔が開いていても通信できることもあるそうだが、日本で販売を担当している大塚商会は10mと5mという距離を推奨している。

 機器の配置が済んだら、スティックを接続したパソコンに専用ソフトウェアをインストールし、それぞれのStingの設定に移る。この設定では、Stingがどのような機器につながっているのかということと、どの部屋にあるのかということまで設定できる。機器の台数がそれほど多くなければ、すべてのStingを1つのグループにまとめてしまえば良いだろう。ちなみに、Stingのネットワークには最大で63個のStingが参加できる。Sting+が1つ参加することを考えれば、合計で64台の電気機器の消費電力を計測できる。

 準備ができて、専用ソフトウェアを起動すると、それぞれのStingからデータを受信する。専用ソフトウェアはそのデータを集計し、消費電力量の推移を棒グラフで表示する。すべての機器の消費電力量の合計を表示するだけでなく、合計と特定の機器の消費電力量を比較することも可能だ(図3)。

図3 専用ソフトウェアで、消費電力量の推移を表示したところ。全体の消費電力量(薄い紫)の中で、特定の機器の消費電力量(濃い紫)がどれくらいの割合になるのかということも表示できる

 Stingの最大の特長は無線通信でデータを送受信するので、余計な配線作業が不要な点にある。また、専用ソフトウェア上でそれぞれのStingがどのような機器につながっているのか、どの部屋にあるのかといったことを設定できるところも便利だ。電気料金単価を設定すれば、消費電力量を電気代の形で表示する機能もある。簡単に使い始められて、使い込むとさまざまな便利な機能があることが分かってくる。

 欠点を挙げるとすれば、データを無線通信で送受信していることだ。ケーブル接続とは違い、つながっているのかどうかが分かりにくくなるということも考えられる。また、壁などの障害物を隔てたときに通信できるかどうかは、実際に使ってみないと分からない。

 大塚商会はSting(3つ)、Sting+(1つ)、スティックをセットにして「電力の見える化 スターターパック」として販売している。価格は税抜で12万円だ。この規模ならば通信に失敗するということはほとんどないだろう。まずはこのセットから始めてみてはいかがだろうか。

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