岩手も青森と同様に風力発電と地熱発電の潜在量が非常に大きく、いずれも全国で2番目の規模が推定されている。2020年に県内の電力需要の35%を再生可能エネルギーでカバーする計画を推進中だ。地熱発電は実績が上がっており、今後は発電量の大きい風力の拡大に力を入れる。
政府が先ごろ発表した「革新的エネルギー・環境戦略」では2030年に再生可能エネルギーの比率を35%に拡大する目標だが、岩手県は10年早く2020年に達成する計画を進めている。すでに2010年の時点で県内の電力使用量の18%を再生可能エネルギーでカバーしており、さらに10年間で比率を倍増させる。
これまでは小水力発電と地熱発電による電力が多く、特に地熱発電は大分と秋田に次いで全国でも3番目の発電量を誇る(図1)。
潜在的に利用可能な再生可能エネルギーも豊富で、地熱発電は全国で発電可能な電力量の6分の1を占めるほどである。同様に風力発電も全国の1割近い潜在量が見込まれている(図2)。
このうち発電量の大きさという点では、風力発電が地熱発電よりも20倍の可能性を秘めている。風力発電に必要な平均風速5.5m/s以上の地域を対象に推定したもので、洋上風力を含まない陸上だけの潜在量である。
現在のところ岩手県内には大規模な風力発電所が2か所しかない。2004年に「釜石広域ウインドファーム」(43MW)が運転を開始して以降、建設計画が進んでいないのが実情だ。風力発電は地熱発電とともに、初期の建設費が大きく、しかも周辺の環境に影響を及ぼすため調整に時間がかかるという問題があった。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度によって、長期間にわたる電力の買取が保証され、建設費を回収しやすくなったことで状況が好転した。環境面の問題についても、経済産業省と環境省がアセスメント(影響評価)の簡素化を進めており、建設までの調整期間を大幅に短縮できる見込みだ。
岩手県は2012年3月に「岩手県温暖化対策実行計画」を策定して、省エネと創エネを推進する施策をとりまとめた。その中で2020年に再生可能エネルギーの比率を35%に高める目標を設定した。太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスの5種類の発電方式ごとに導入量の目標を具体的に決めている(図3)。
2020年には再生可能エネルギーによる電力のうち半分は風力発電が占める見込みだ。今後10年以内に、大規模な風力発電所が数か所に建設されることになるだろう。東日本大震災の被災地でもある岩手県では、再生可能エネルギーの拡大が復興を推進していく期待は大きい。
2013年版(3)岩手:「風力やバイオマスで自給率35%へ、復興を加速するエネルギー拡大戦略」
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