風力発電と太陽光発電で2020年に全国トップレベルへ日本列島エネルギー改造計画(6)山形

再生可能エネルギーの導入に控えめだった山形県が積極的な拡大戦略を開始した。特に風力発電と太陽光発電を大幅に増やす施策を展開中だ。風力や太陽光で問題になる発電量の変動に対応するため、蓄電池やバイオマス発電などと組み合わせた電力供給システムの導入にも取り組む。

» 2012年10月18日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 東北地方は再生可能エネルギーの導入で先行しているが、その中で宮城県と山形県が出遅れ気味だった。両県ともに小水力発電が進んでいるほかには、再生可能エネルギーの供給量はさほど多くなかった(図1)。

図1 山形県の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 しかし宮城に続いて山形も2012年度から本格的に拡大戦略を開始して、他県を上回る規模の発電設備を増強する計画を推進中だ。2012年3月に策定した「山形県エネルギー戦略」には、意欲的な目標値と具体的な施策が盛り込まれている。

 現時点で65MW(メガワット)に過ぎない再生可能エネルギーによる発電量を、2020年までに9倍の570MWへ、さらに2030年には877万MWへ拡大する(図2)。この2030年の目標値は、2010年度の山形県全体の電力消費量の20%以上に相当する規模になる。

図2 山形県の再生可能エネルギーによる電源開発目標。出典:山形県環境エネルギー部

 最も大きく伸ばすのは風力発電で、2020年までに大型風車160基分、合計で312MWの設備拡大を見込んでいる。その推進施策として発電設備の設置に関する規制緩和のほか、事業者に対する融資・インセンティブ制度などを2014年までに整備する予定だ。

 さらに風力と並んで注力するのが太陽光である。メガソーラーの建設誘致に加えて、家庭や事業所に太陽光パネルを設置するための補助金やリース制度を創設する。これにより1件あたり5kW程度の太陽光パネルを2020年までに4万5000件に拡大させる計画だ。太陽光発電の規模は現状の14倍に増える。

 このほかにバイオマス発電や地熱発電、さらには太陽熱をはじめとする再生可能エネルギーによる熱源の開発にも力を入れていく。山形県で期待できる再生可能エネルギーの潜在量を見ると、現在の県全体のエネルギー消費量に匹敵する規模がある(図3)。風力と太陽光を筆頭に、バイオマスや各種の熱エネルギーも豊富に存在している。これらを効率よく電源や熱源として開発することで、エネルギーの自給率を高めていく。

図3 山形県のエネルギー消費量と再生可能エネルギー期待可採量。出典:山形県環境エネルギー部

 以上の拡大計画と並行して、再生可能エネルギーが抱える重要な問題の解決にも取り組む。風力発電や太陽光発電は気象条件によって発電量(出力)が大きく変動してしまうため、電力の安定供給という面で難点がある。

 この問題を解決するために、発電量が安定しているバイオマスや水力発電、天然ガスによる火力発電を組み合わせ、さらには余剰電力を大型の蓄電池に収容することで、電力の供給量を安定させるシステムを導入する(図4)。

図4 風力発電や太陽光発電の出力変動を調整するシステム。出典:山形県環境エネルギー部

 再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせた電力供給システムは県内の各地域に導入して、それぞれの地域でエネルギーを自給自足できるようにする。2014年までに住宅地や農業・工業地域などで実証実験を行い、2015年からシステムの構築に着手して、2020年までに県内各地に配備する予定である。

2014年版(6)山形:「豪雪地帯で増えるメガソーラー、太陽電池の種類と角度がカギに」

2013年版(6)山形:「2030年に大型風力発電を230基、日本海沿岸から内陸の高原まで」

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