人間を節電する気にさせる「ネガワット」キーワード解説

「節電しましょう」という呼びかけだけでは、人間はなかなか行動に移せない。消費電力量の推移を目立つ場所に掲示するような取り組みも、ある程度の効果は期待できるが、もっと効果を期待できる方法がある。「ネガワット」を売買できるようにすることだ。

» 2012年12月14日 11時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 「ネガワット」とは、需要家が節約した分の電力を指す。アメリカのロッキー・マウンテン研究所で所長を務めるエイモリー・ロビンス博士が1990年の論文「The Negawatt Revolution」で提唱した。ロビンス博士はこの論文で、1990年の時点でも大幅な節電に寄与する技術が登場していることと、従来使っている機器の使い方に気を付けるだけで相当な量の電力を節約できることを指摘している。

 さらに、1企業や家庭単位では節電しようと努力しても、わずかな結果しか得られないが、国や自治体の単位で節電を徹底すれば、節約した分は膨大な量になり、発電所をいくつも増設する必要がなくなると訴えている。節電した電力も、考えようによっては電力と見なすことができるということだ。

 ロビンス博士は人間はなかなか節電しないことを指摘し、節約した電力を「ネガワット」とし、ネガワットを取引できるようにしようと提唱した。節電で浮いた電力を売買して、金銭的な利益を得られるようにすることが狙いだ。

 日本では東日本大震災後の電力不足から、ネガワット取引が始まった。取引の方法は主に2種類。1つ目は電力需要が逼迫すると予想できる日の1週間ほど前から入札を募り、需要家が自身で節約できると見込める電力に値段を付けて入札する。入札した電力は安い値段が付いたものから買い取っていく。この方法は2012年夏の電力不足を避けるために関西電力が導入したものだ。

 もう1つは、需要家が結果として節電できた電力に対し、協力金として金銭を支払うという方法。この方法では電力会社から「アグリゲータ」に需要が逼迫しそうであることを知らせる連絡が届き、アグリゲータは契約している各需要家にできる限りの節電を求める。その結果各需要家が節電できた量に対し、それぞれ協力金を支払う。アグリゲータは各需要家の節電努力を集めて、電力会社に一括で提供する。

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