燃料電池と言えば、家庭用燃料電池「エネファーム」を思い出す人が多いだろう。確かに節電には役立ってくれるが、本体が大きすぎるという声もよく聞く。そのような声に応えるような、携帯型の燃料電池を独立行政法人産業技術総合研究所が開発した。燃料はカセットボンベで済むという。
今回、独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)が開発した燃料電池は図1に示したもの。女性でも持ち運びできる大きさで、燃料は卓上ガスコンロで使うLPGカセットボンベで済む。発電した電力はUSB端子からスマートフォンなどに供給できる。
一般的な燃料電池はガスを改質して水素だけを取り出して燃料電池に送る。そのため、本体が大きくなるという側面もあった。ガスをそのまま燃料電池に送り込んでしまうと、燃料電池の劣化が進む。特にLPGの主成分であるブタンは、熱分解で水素を取り出す過程で炭素を発生させる。炭素は燃料電池の燃料極に付着し、劣化が進む。それを防ぐために、既存の燃料電池では改質器でブタンから炭素を取り除いた後で、水素を燃料電池に送っていた。
今回開発した燃料電池では、LPGカセットボンベのガスをそのまま燃料電池に送る。燃料極にナノメートルサイズのセリア(CeO2)という物質を付着させたところ、ブタンを直接投入しても安定して発電できるようになった(図2)。発電を続けても、燃料極の表面炭素が蓄積することがなくなったのだ。この電極は十分な改質機能を持つため、外部に改質器を置く必要がなくなった。
燃料電池自体が改質機能を持つようになったため、本体を小型化でき、燃料にLPGカセットボンベのガスを直接使えるようになった。起動時はLPGカセットボンベのガスを燃焼させればよい。外出先や、災害時の電源確保に役立つと考えられる。
今後は、燃料電池の発電性能と耐久性をさらに向上させていき、小型燃料電池システムを改良していく。外出時、災害時の電源としてだけでなく、燃料電池車向けの燃料電池としての開発も進めるという。
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