火力発電の依存率99%、美しい島に再生可能エネルギーを日本列島エネルギー改造計画(47)沖縄

沖縄県の電力は99%以上が火力発電で、大半の設備が石油を燃料にしている。環境面の問題はもとより、供給が不安定な石油に依存し続けるわけにはいかない。2030年までに再生可能エネルギーの割合を10%に引き上げるため、風力と太陽光、サトウキビを中心にバイオマスの拡大を急ぐ。

» 2013年03月26日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 日本の中で節電の必要がないのは沖縄だけだろう。主要な島に火力発電所があって、需要に対応できる十分な電力を供給することができる。原子力の問題とも無縁だ。沖縄電力のネットワークを見ると、それぞれの島で自立分散型の電力供給体制が見事にできあがっている(図1)。

図1 沖縄県の発電設備と送電網(本島周辺)。出典:沖縄電力

 沖縄県には160の島があり、そのうち49か所が人の住む有人島である。島が広がる範囲は南北に400km(キロメートル)、東西は1000kmにもおよぶ。一番西にあるのは与那国島で、一番東は北大東島だ。この1000km離れた2つの島にも、それぞれ火力発電所がある(図2)。小さな島には近くの島から海底ケーブルで電力が送られる。

図2 沖縄県の発電設備と送電網(離島)。出典:沖縄電力

 ところが問題は、沖縄全体の電力の99%以上を火力発電が占めていることだ。しかも発電設備の多くが石油を燃料に使っている。あの美しい沖縄の島々には、CO2排出量の多い石油を使った火力発電はイメージに合わない。脱・石油依存に向けて、いよいよ県を挙げて再生可能エネルギーの導入に動き始めた。

図3 沖縄県の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 これまで沖縄県の取り組みは遅れていた。再生可能エネルギーの導入量は全国でも最下位である(図3)。海に囲まれた地の利を生かして風力発電が最も多いが、それでも全国で25番目である。太陽光発電は36番目で、降り注ぐ太陽のエネルギーを十分に活用できていない。

 大型の風車や太陽光パネルは美しい島の景観を損ねるという見方もあるが、石油への依存度を引き下げるための手段として、ある程度は許容すべきだろう。

 例えば2007年に宮古島で稼働した「狩俣(かりまた)風力発電所」は、島の北部の海岸線に建てられている。風車の高さは77メートルに達し、発電能力は2基で1.8MW(メガワット)になる。隣接して沖縄電力の風車が1基あって、合わせて3つの風車が並んでいるが、さほど景観を損ねている印象は受けない(図4)。

図4 宮古島の狩俣風力発電所。出典:沖縄新エネ開発

 実は沖縄では1990年代に風力発電所が数多く建てられたものの、休止してしまったケースが数多くある。理由のひとつは沖縄特有の強い風で、特に台風が接近した時が問題だ。

 強風が原因で風車が倒壊してしまったこともある。2003年に宮古島を台風が直撃した際には、3基の風車が倒壊した。その時の瞬間最大風速は90メートル/秒に達していた。

図5 波照間島可倒式風力発電設備。出典:沖縄電力

 そこで新たに採用が始まったのが、可倒式の風力発電設備である。強風時には風車を倒して地面に固定できるようになっている。2009年に日本で初めて波照間島に設置された(図5)。発電能力は1基あたり245kWと小さめだが、強風を心配しなくて済むようになった。

 2011年には同じ規模の可倒式の設備が南大東島でも稼働を始めている。今後も可倒式を含めて小規模な風力発電所が沖縄の島々に広がっていくだろう。

 沖縄県は脱・石油依存に向けた新しいエネルギービジョンの目標値として、2005年の時点でわずか0.2%だった再生可能エネルギーの比率を2020年に4%へ、さらに2030年には10%まで引き上げることを宣言した。その中心になるのは風力発電と太陽光発電の2つだ。

 沖縄で初めてのメガソーラーは2010年に運転を開始した「宮古島メガソーラー実証研究設備」である。発電能力は4MWで、宮古島の最大需要50MW(5万kW)の8%に相当する。同じ島内には規模の大きい火力発電所のほか、風力発電所も狩俣を含めて2か所ある(図6)。

 メガソーラー実証研究設備では、出力が天候に左右される太陽光発電と風力発電を想定して、電力供給を安定化させるための検証を2014年3月まで続ける予定だ。4MWに対応できるナトリウム蓄電池を使って、各発電所から送られてくる電力を必要に応じて蓄電しながら送電する仕組みができている。

図6 宮古島メガソーラー実証研究設備(上)と周辺の発電設備(下)。出典:沖縄電力

 多くの島では需要の規模がさほど大きくないため、出力が変わりやすい太陽光発電や風力発電を導入した場合に、電力を安定して供給できなくなるおそれがある。その問題を実証研究で検証することによって、今後の再生可能エネルギーの導入を推進しやすくする考えだ。

 このほかに沖縄名産のサトウキビを活用したバイオマス発電の取り組みもある。サトウキビから砂糖を作る過程で、糖分を搾り出した後のカスが大量に出る。これを「バガス」と呼び、バイオマス発電の燃料に使うことができる。すでに多くの製糖工場にバガスを利用したバイオマス発電が導入されていて、工場で使う電力を自給している。

 脱・石油依存を目指す再生可能エネルギー拡大計画は、沖縄ならではの工夫をこらしながら、着実に進み始めた。美しい島の環境を維持しながら、自立分散型のエネルギー供給体制を強固なものにしていく。

*電子ブックレット「日本列島エネルギー改造計画 −九州・沖縄編−Part II」をダウンロード

2014年版(47)沖縄:「島のエネルギーをCO2フリーに、石油から太陽光・風力・バイオマスへ」

2013年版(47)沖縄:「海洋温度差で未来をひらく、離島の自給率100%へ太陽光と風力も加速」

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