コーヒーの焙煎と似た技術で改善、日本製紙が新バイオマス燃料を開発自然エネルギー

バイオマス燃料を石炭火力発電所で利用できれば、大規模な設備投資なく、発電量を維持したままCO2の排出量を低減できる。いわばクリーンな石炭火力の実現ともいえる。日本製紙はこのような用途に役立つ燃料を開発した。

» 2013年04月08日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 日本製紙は新規バイオマス固形燃料「トレファイドペレット」を開発した(図1)。石炭火力ボイラーの補助燃料として利用でき、CO2発生量を減らす効果がある。

 石炭を粉状にして利用する微粉炭ボイラーは燃焼効率が高いが、CO2発生量が多い。そこで、木質バイオマスを混ぜ込み(混焼)、出力を維持しつつ発生量を減らす取り組みが進んでいる。ただし、木質バイオマスは微粉炭と比較して粉砕しにくく、保管時の耐水性も低い。このため、混焼率を重量比で2〜3%にまでしか高められなかった。これでは効果が上がりにくい。

 トレファイドペレットはこのような欠点を取り除いたバイオマス固形燃料だという。日本製紙が同社の八代工場にある微粉炭ボイラーへ25%のトレファイドペレットを混合したところ、ボイラーの燃焼性に問題がなかったからだ。混合可能な比率を今後も高めていく計画だ。

図1 トレファイドペレット。パルプは用いていない。出典:日本製紙

 トレファイドペレットは、300℃程度の比較的低温で木質バイオマスを半炭化する「トレファクション技術」を利用した燃料。基本的な考え方はコーヒーの焙煎技術と似ている。従来の炭化技術では木質原料が持つエネルギー(熱量)の5割以上が失われていたが、トレファクション技術を使えば、約9割維持できる。ペレット化し、体積を減らすことができるため、燃料の輸送効率も高まる。

 同技術は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2011年に採択した「戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業(実用化開発)」で開発したもの。

 日本製紙は北海道の釧路工場に、自家発電用の他、IPP(電力卸供給)用のボイラーとタービンを備えている。現在は電力会社の要請に応えて、電力をコストベースで供給しており、今後は、供給電力量を増やしていく見込みだ。このとき、トレファイドペレットを利用すると、CO2排出量の少ない石炭火力発電が実現する。

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