灼熱の国に向く再生可能な「太陽熱発電」、数百MWが可能自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2013年04月19日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
前のページへ 1|2       

実は先行していた日本の太陽熱発電

 集光型太陽熱発電の実用化では、海外企業が先行している。だが、研究開発では、本来日本が先頭を走っていた。今から32年前の1981年のことだ。当時の仁尾町(現在の香川県三豊市)では、新エネルギー総合開発機構(現在のNEDO)が、世界初の太陽熱発電の実験を進めていた。石油ショックの衝撃から、サンシャイン計画が始まり、その目玉として研究が進んだ。2種類の方式の太陽熱発電システムの開発に成功し、いずれの出力も1000kWに達した。しかし、好天に恵まれる香川県であっても十分な日照量がないことが分かった。装置が巨大化してしまうということだ。このため、研究への公的支援が止まってしまった。

 現在、国内企業による研究開発が再び進み始めている。いずれも日本の国内市場を狙ったものではなく、開発したプラントを海外に輸出することを目指した動きだ。

 集光型太陽熱発電に関心のある企業は、鉄鋼や造船などを得意とする製造業に多い。例えば、JFEエンジニアリングは神奈川県においてリニアフレネル式とタワー式の集光型太陽熱発電を実験できるプラント施設を2011年に建設している。

 2012年には三井造船と太陽建設がアフリカのチュニジアでガスタービンコンバインドサイクル発電とタワー式の集光型太陽熱発電の複合システムの技術実証を開始、これはNEDOの実証事業の一環だ。千代田化工建設は2012年、溶融塩集熱管製造技術を持つシェア最大の企業イタリアArchimede Solar Energyの株式を15%取得、太陽熱発電事業分野を強化した。

 日立造船はフレネル式に取り組む。サウジアラビア海水淡水化公団と協力し、2013年3月から1年間の予定で実証プラントを建設し、実証実験を開始した(図3)。熱出力は390kWth。

 同社の技術は「超低設置フレネル式太陽光集光装置」と呼ばれる。特徴は2つ。まず、従来のフレネル式とは異なり、太陽高度に応じて反射鏡の角度と曲面の形状を制御可能だ。これにより、トラフ式と同程度以上、最大80倍の集光が可能だ。フレネル式の欠点ともいえる効率改善に役立つ。次に集熱管を設置する高さが低い。一般にフレネル式は反射鏡の上方に集熱管を設置するが、設置位置が高いことが課題になっていた。日立造船は3.8mに抑えたことが特徴である。耐風強度が高まり、メンテナンス性も向上するという。

 直接太陽光が当たる集熱管ではオイルを循環させ最大340℃まで加熱する。オイルが水を加熱し、200℃弱の水蒸気が発生、これがタービンを回す形だ。既にタービン以降の発電技術を確立しているため、今回の実証実験では水蒸気を発生させる時点までを検証するという。

図3 サウジアラビアに設置したフレネル式集熱装置。出典:日立造船
前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.