東京電力の外部調達が不調に、石炭火力3件の入札にとどまる電力供給サービス

東京電力は発電コストの削減を目的に電源の外部調達を増やす計画を進めているが、早くも見直しを迫られている。2019年度から調達する260万kW分の火力発電の供給者を募集したところ、入札は3件しかなく、合計68万kWにとどまった。最大の問題は調達価格の低さにある。

» 2013年05月29日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 これまで東京電力をはじめ電力会社は自社で運営する発電所を中核に事業を展開してきた。早期の事業構造改革が必要な東京電力は2012年5月に策定した「総合特別事業計画」の中で、2019年度から電源を外部調達する方針を掲げ、合計260万kWにのぼる火力発電を競争入札で募集することを決定した(図1)。

図1 東京電力の電源開発計画(2012年5月の「総合特別事業計画」による)。カッコ内の数値は発電規模(単位:万kW)。出典:東京電力

 東京電力は2013年2月に募集を開始して、5月24日に締め切ったが、入札は3件しかなく、電源の規模は合計で68万kWにとどまった。計画値のわずか4分の1である。しかも3件ともに発電開始は2020年度を予定している。調達計画の大幅な見直しを迫られる状況になった。

 競争入札が不調に終わった最大の要因は、調達価格の上限を1kWhあたり9.53円と低く設定したことにある(図2)。一般に火力発電のコストは、石炭が4〜5円と最も安く、天然ガスは10〜11円、石油は15〜16円かかる。将来に向けて天然ガスの価格低下が見込まれるものの、それでも9.53円以下では採算が合わない。結局のところ条件に見合うのは石炭火力しかなく、発電事業者の関心をそぐことになった。

図2 東京電力の競争入札要件。出典:東京電力

 入札した3件の事業者は業種では「鉄鋼」が1件、「電気・ガス業」が2件であることを東京電力は発表したが、具体的な企業名は公表していない。6月中に中立的な機関による評価を経て、7月中に落札者を決定・公表する予定だ。3件すべてが落札することは確実な状況である。

 今のところ入札した企業として名前が挙がっているのは新日鉄住金、中部電力、J-POWER(電源開発)である。もともとJ-POWERは電力会社に電力を卸供給する役割の会社で、外部調達の拡大とは言いがたい。中部電力も同様に、従来から電力会社間で実施している電力融通とさほど変わらない。

 果たして東京電力は2019年度からの不足分をどうするのか。すでに上限価格を設定して競争入札を実施しているため、新たに上限価格を引き上げて再び競争入札を実施することは難しい。ほかの手段で電源を確保するしかなさそうだ。原子力発電所を再稼働させるための環境づくりになっている可能性も否めない。

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