将来の再生可能エネルギーとして期待される「海洋温度差発電」の実証実験が沖縄県の久米島で進んでいる。深層水と表層水の温度差を利用して発電するもので、4月から50kWの規模で実験が始まった。今後は1MWを超える大規模な発電設備の導入を含めて地域全体の活用体制を整備する。
久米島は那覇市から西に約100キロメートルの位置にあって(図1)、年間の平均気温が22.7度と高い。さらに海水の温度は表面に近いところで平均26度もある。水深が深くなると海水の温度が下がるため、この温度差を利用して発電することが可能になる。久米島にある沖縄県海洋深層水研究所が4月から温度差発電の実証実験を続けている。
発電設備は温度の違う深層水と表層水を取り込み、熱交換器によってアンモニアなど沸点の低い媒体を循環させる。温度の高い表層水で媒体を気化させて、その蒸気で発電タービンを回す仕組みだ。気化した媒体は温度の低い深層水で液体に戻して、再び表層水を使って気化できるようにする(図2)。
久米島の実証実験では、表層水と深層水の約20度ある温度差を利用して、50kWの発電を可能にした。この設備の熱交換器の部分に伝熱性能の高いチタン板を新たに採用して、発電効率の向上にも取り組む(図3)。
チタン板を供給した神戸製鋼所によると、熱交換器内で媒体を気化させるための熱の伝達率が20%以上も向上する見込みだ。これにより取り込む海水の量を少なくできるなどのメリットが生まれて、発電コストを下げることが可能になる。
久米島の周辺海域では、海面に近い表層部分の水温は夏季に30度近くまで上昇し、冬季でも20度を超える。一方で水深が深くなると水の標準温度である4度に近づいていく(図4)。実証実験では海水をくみ上げるコストと温度差を検討して、水深700メートルの深層水を取り込むことにした。
当面は性能試験を続けながら、次のステップとして発電能力が1MWを超える大規模な設備の導入準備を進める計画だ。加えて発電設備の周辺に海洋深層水の利用設備を展開して、地域全体で海洋エネルギーを有効に活用できる体制づくりを目指す(図5)。
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