太陽熱を熱のまま利用、都市ガスと組み合わせてエネルギー消費量を28%削減省エネ機器

エネルギー消費に占める給湯の割合は2割以上に達する。オフィスや高層ビルでは比率が下がるが、低層住宅や小規模業務用では給湯用のエネルギーがばかにならない。東京ガスとパーパスは太陽熱とガスを組み合わせて給湯に要するエネルギー削減に役立つ製品を開発した。

» 2013年06月19日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 太陽エネルギーはさまざまな使い方が可能だ。電力に変換する太陽電池だけではない。太陽熱をそのまま使う手法もある。なぜ熱のまま使うのか。

 経済産業省資源エネルギー庁が2013年6月に公表した「エネルギー白書 2013」では、2010年度の民生分野におけるエネルギー消費の現状を、住宅と建築物に分けて示している(図1)。これを見ると、住宅では給湯用のエネルギー消費が28%、建築物でも14%に上ることが分かる。従って給湯用のエネルギーとして太陽熱を利用できればエネルギー消費量削減に役立つはずだ。

図1 民生分野におけるエネルギー消費の現状(2010年度)。出典:エネルギー白書 2013

 東京ガスとパーパスは共同で、保育園や一般飲食店などの小規模業務用に太陽熱とガスを併用するシステム「太陽熱利用ガス温水システム『SOLAMO』」を開発、2013年7月から販売する。価格は210万円(税込、標準施工費を含む)である。

 SOLAMOは、屋根に固定した集熱器で太陽熱を集めて水道水の温度を高め、その後、必要な温度までガスで加熱するというシステムだ(図2)。太陽熱だけではなく、ガスを使っていることから太陽エネルギーの利用方法としては一見、弱いように思える。しかし、気象条件や給湯需要に左右されず、常に望みの量と温度の湯が得られるメリットは大きい。

 エネルギー消費量削減効果もある。給食を提供する保育園(120人)に対して、集熱器を3枚(6m2)配置した場合、年間で太陽熱を2200kWh利用でき、夏場の給湯需要の約半分を太陽熱でまかなうことができるという。年間を通じた一次エネルギーの使用量のうち、28%を削減できる計算だ。

 図2にはSOLAMOを構成する3つの要素が描かれている。屋根に置く「集熱器」(2枚または3枚を利用)、地上に設置する「蓄熱タンクユニット」、暖まった水を加熱する「潜熱回収型ガス給湯器」だ。水道水(給水)は集熱器には向かわない。集熱器と蓄熱タンクユニットの間を不凍液(エチレングリコール水溶液)が循環している。図には描かれていないが、2013年12月にはガス削減量や二酸化炭素の排出削減量を見える化するための小型表示ユニットも製品化する。

図2 SOLAMOのシステム構成。出典:東京ガス

施工期間を1日に短縮

 SOLAMOのように屋根に設置し、パイピングが必要なシステムは工事に時間がかかることが多い。屋根の形状や配置が一定ではないため、設計・施工に手間が掛かるからだ。

 太陽熱を利用する従来のシステムでは設計・施工に平均して約7日を要したという。SOLAMOではさまざまな屋根に適合する屋根接続金具を含み、全ての要素をパッケージ化したため、設計フェーズが不要になり、1日の施工で利用可能になった。

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