外出すると電力は使わない――この事実をサービスと組み合わせるエネルギー管理

電力需給のひっ迫解消に役立つデマンドレスポンス。時間帯別電力料金を導入したり、節電に対してポイントを提供したりすることで、必要に応じて消費電力量を減らそうという取り組みだ。NTTファシリティーズが提供するサービスでは、顧客の外出を促し、さらに大胆に電力需要を減らす。

» 2013年06月28日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 電力の需給を調整する仕組みはさまざまだ。大きく分けると2つある。電力会社間の電力融通の他、発電所の増強、さまざまな蓄電システムの追加など供給側での取り組みが1つ。もう1つは需要側の行動である。一般的な節電の他、需給ひっ迫時に焦点を絞った活動がありうる。供給側の取り組みと比較すると、需要側の取り組みの方が「安く付く」。ハードウェアへの投資が少なくても、十分な効果が期待できるからだ。

 デマンドレスポンスは需給ひっ迫時に需要側へ行動を促す仕組みだ。2つの手法がある。1つは需給バランスに応じて電気料金を変えていくもの、もう1つは節電を誘導するための何らかの動機付け(インセンティブ)を与えるものだ。

 NTTファシリティーズが新電力のエネットと共同で提供中のマンション向けデマンドレスポンスサービス「EnneVision」では両方の手法を取り入れている。まず、契約世帯に設置したスマートメーターを使い、時間帯別料金サービスを設定している。次に、電力需給ひっ迫時には節電量に応じてポイントを還元する節電ポイントサービスを提供する。この節電ポイントサービスは動機付けとして比較的強い。なぜなら電気料金の支払いにこのポイントが利用できるからだ。

 2013年7月からは動機付けの手法として新しい試みを追加する。逆転の発想といえる試みだ。例えば夏季の午後に電力需給がひっ迫したとしよう。契約世帯の消費電力量を絞り込みたい。どのような動機付けが有効だろうか。そもそも家庭内に人がとどまる限り、照明や空調などが動いている。そうであれば、空調が効いた施設に誘導して、家庭の消費電力をゼロにしてしまえばよい。

 このような行動は個々人の生活の知恵としては既にある。例えば、日中は涼しい図書館に出掛けて読書の時間に充てるといった行動である。環境省はこのような行動に「クールシェア」という名前を付けている。涼しい場所に集まって、楽しく涼しさをシェアするという発想だ。家庭部門のエネルギー消費量が確実に減り、施設の消費電力はあまり増えない。

図1 節電お出かけ情報を含むデマンドレスポンスの仕組み。出典:NTTファシリティーズ

 NTTファシリティーズの取り組みでは、需給ひっ迫時に「節電お出かけ情報」を配信する(図1)。節電が必要になるタイミングで限定利用が可能な割引クーポンなどが入っており、これが新しい動機付けになる。実際に外出すると、従来の節電ポイントも有効であるため、動機付けの強さが増える。

 節電お出かけ情報に協力する企業は当初は6社である。プリンスホテル(エプソン 品川アクアスタジアム)と、コニカミノルタプラネタリウム(満天、天空)、サンシャインエンタプライズ(サンシャイン水族館、サンシャイン60展望台)、東急レクリエーション(109シネマズ木場、同港北、同川崎、同グランベリーモール、同MM横浜)、東京おもちゃ美術館、凸版印刷(印刷博物館)だ。東京都と神奈川県の施設が利用できることになる。

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