中国電力の三隅発電所では、出力100万kWの火力発電所で、検証を行った。林地残材バイオマス設備を発電所構内に新設し、島根県素材流通協同組合から林地残材バイオマスチップを調達、石炭と混焼した。三隅では、CO2の削減と設備の運用性を特に調べた。
2011年2月から2013年3月の実証運転では、木質バイオマス2.5万トンと石炭183万トンを混焼。木質バイオマスから年間2830万5474kWhの電力を得た計算となり、CO2を約2.2万トン削減できた。木質バイオマスの調達にも課題はなかった。発電設備の定期点検期間(4月〜7月)を除くと、0.24〜0.31万トン/月と安定していたからだ。
中国電力の新小野田発電所では、2007年から既に木質バイオマスを混焼している。主に伐採材や間伐材を使ってきた。補助金を受け、林地残材受け入れ設備を増強、2011年3月から2013年3月までの実証運転では新たに林地残材を使った。新小野田には出力50万kWの設備が2つある。山口県森林組合連合会から林地残材バイオマスチップを調達した。実証運転では三隅と同じ検証項目に加え、混焼率も調べた。
バイオマスチップ1.9万トンの年間を通じた安定調達ができ、ミル、バイオマス設備、ボイラのいずれも問題がなかったという。混焼率は2013年1月の2日間に検証、混焼率を2.0%に高めても設備に異常がないことが分かった。
年間を通じ、バイオチップ1.9万トンと石炭141万トンを混焼し、バイオマスから1761万7191kWh/年の電力を得、CO2を1.4万トン削減できたという。
住友共同電力の新居浜西火力発電所では出力15万kWの3号機を使って、高効率微粉炭火力に年平均2.5重量%の林地残材を継続的に混焼できるかを調べた(図4)。結果は、2.5重量%の連続運転に成功し、最大3重量%の混焼率も確認できた(図5)。ただし、2012年度は石炭使用量が増加してしまったため、年平均では目標の2.5重量%に届いていない。
住友共同電力はコストについても調べている。山林事業者の作業方法が合理化され、積載効率や搬出方法の改善が進んでいることが分かった。一方、木質バイオマスの搬出にトラックを利用しているため、ガソリン価格の上昇で、改善分が相殺されてしまい、調達コストが削減できなかったという。山林事業者への意見聴取では、事業継続への強い要望があったこともあり、今後の実証運転では調達コストの低減を目指すとした。
電源開発の松浦火力発電所では、100万kWの設備2基を利用し、木質ペレットを6300トン使って、混焼率について特に調べた。3重量%(最大5重量%)を目指したほか、混焼率の変化の影響を調べた。まず、ミル単機で混焼率を1〜4%まで変え、ミルの性能を調べた。次にミル全台を使って混焼率3%を維持し、プラントの運用性と環境特性を調べた。その結果、課題はなかったという。松浦の実証運転は2015年3月まで続くため、今後は石炭と木質ペレットに加えて、第3のバイオマスを追加した、3種類混焼試験を計画しているという。
九州電力の苓北発電所ではCO2のライフサイクルアセスメント(LCA)を特に調べた。70万kWの設備2基を使い、熊本県内の林地残材を調達した。調達量は計画7500トンに対して、実績7520トン、混焼率0.5重量%に対して、0.4重量%であり、ほぼ実現できている。木質バイオマスによる発電電力量は1280万kWhだという。
LCAの評価は、CO2減少が約9500トンだとした。使用した木質バイオマス7520トンの熱量は石炭に換算すると約4100トンになる。木質バイオマスを利用したことによるCO2発生量は479トン、一方、石炭は9947トンなので、約9500トンの削減になるという計算だ(図6)。同社はトラック輸送の課題についても調査している。1日最大6台のトラック輸送が加わったが、木質バイオマスの飛散やトラックの交通渋滞、地域住民からの苦情などはなかったという。
今後は、木材調達からチップ製造、輸送までの流れを軌道に乗せて持続性を高めるほか、2014年度には年平均1重量%まで混焼率を向上するとした。
種類の異なる6つの火力発電所の実証運転から分かったことは、火力発電所本体の設備を増強することなく、2重量%程度の木質バイオマスを追加でき、CO2排出量を低減できることだ。連続運転も可能だ。さらに、木質バイオマスの調達量や調達量のばらつきにも問題が少ない。次は、調達コストに関する同様の調査が必要だろう。
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