丸ごとエネルギー管理できるマンションはどれだ、経産省が評価制度を開始エネルギー管理

無理なく節電でき、電力サービスの自由度が高い「スマートマンション」。しかし、新しい考え方が多く分かりにくい。経済産業省は従来の補助金政策に加えて、評価制度を開始した。新築マンションの購入時などに役立つことを考慮した制度だ。

» 2013年08月22日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 戸建て住宅やオフィスと比べて、マンションのエネルギー管理は「難しい」。個人の意思で決断できる戸建て住宅や、企業の論理で動くオフィスビルとは異なり、住民の意思がまとまらないと何事も決まらないからだ。だが、大都市圏のマンション化率は2割前後と高い。放置できない。どうすれば良いだろうか。

 経済産業省は2つの政策を進めることで、エネルギー管理能力の高いマンション「スマートマンション」の導入が進むと考えている。1つは「マンション向けエネルギー管理システム(MEMS)」に対して補助金を投じることだ。総額130億円の補助金を用意しており、MEMSアグリゲーターのサービスを1年以上受ける場合、導入費用の最大3分の1に補助金が下りる(図1)。電力量センサーやスマートメーター、通信機器などが対象だ。

図1 MEMS導入をめぐる補助金の流れ(上)と、スマートマンションの備える機能例(下)。出典:経済産業省

 MEMSは、家庭用のHEMSとビル用のBEMSの両方の機能を併せ持ったエネルギー管理システムだ。個別の住戸の消費電力量をスマートメーターなどによって測定、集計する他、電力消費量を制御するデマンドレスポンスを実現できる。これはHEMSの機能に近い。マンション共有部の照明や空調、蓄電池の制御はBEMSが受け持つサービスと似ている。

スマートマンションかどうか一目で分かる

 もう1つの政策は2013年8月に発表した「スマートマンション評価制度」だ。経済産業省は「スマートマンション導入加速化推進事業」を進めており、この事業で認定されたマンションが提供するサービスを、5つの項目に分けてロゴマークの形で配布する(図2)。消費者はロゴマークを確認することで、これから購入しようとしているマンションの「性能」を大まかに評価できるという取り組みだ。MEMSアグリゲーターの提供する先進サービスが一目で分かるものだととらえており、同省では住宅情報誌などで採用して欲しいという。

図2 スマートマンションロゴマーク(例1)。出典:経済産業省

 ロゴに表示する5つの項目は「エネマネ」「DR」「独自料金」「創蓄連携」「家電制御」だ。用語としてこなれていないため、ロゴだけではなく、マンション分譲者などによる十分な説明が必要だろう。経済産業省のロゴマークでも図2に説明が加わった図3が用意されているが、まだ分かりにくい。

図3 スマートマンションロゴマーク(例2)。出典:経済産業省

 エネマネとはMEMSが導入されていることを示す用語だ。マンション共有部や占有部の電力需要を見える化サービスで表示できることに加えて、従来の同規模のマンションと比較して10%以上節電可能な設計になっていることを示す。

 DRはデマンドレスポンスのサービスが導入されていることを示している。電力ひっ迫時に節電要請が届き、最大電力需要が起きる時間をずらすピークシフトや、最大電力需要の量自体を減らすピークカットに役立てる。ただし、節電要請に応えた場合の「ボーナス」の内容は、DRの表示だけでは分からない。

 独自料金とは、時間帯別などの独自の電気料金プランを選択できることを意味する。ただし、スマートマンションでなくても電力会社が提供する料金プランを選択できる。MEMSアグリゲーターが高圧一括受電サービスを提供していると、必ず同サービスを受けなければならない。独自料金については具体的な説明を確認する必要がある。

 創蓄連携とは、マンションに共用の太陽光発電システムや大容量蓄電池が設置されていることを意味する。ただし節電や停電時の予備電源などさまざまな使い方が考えられる。非常用の照明やエレベーター、給水ポンプだけが動作する場合もあれば、それ以上の電力が供給される場合もある。やはり、個別に内容を確認する必要がある。

 家電制御という用語も分かりにくい。一見するとデマンドレスポンスと関係があるように見える。しかしそうではない。遠隔地から空調機や照明を制御できることを意味している。なお、制御のプロトコルに「ECHONET Lite(エコーネットライト)」を採用していないと、ロゴに印が付かない。

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