48戸の住宅が合わさると何ができる、横浜で電力を束ねる実験開始エネルギー管理

電力の需要と供給のバランスを保つには、家庭など需要側の取り組みが欠かせない。1つの住宅内で閉じた節電・省エネから、複数の住宅を合わせた形へと広げていくことでより効果的になっていくはずだ。パナソニックはこのような考え方に基づく実証実験を横浜市で開始した。

» 2013年09月02日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 家庭用のエネルギー管理システム(HEMS)とHEMS対応の家電を組み合わせると、宅内の電力の見える化ができる。見える化は節電に役立つ。

 太陽光発電システムや蓄電池を導入すると、宅内でできることの幅が広がる。発電した電力をいつ使うか、いつ充電するか。電気料金の請求額を上手に引き下げ、ピークカットにも貢献できる。

 このような住宅が増えていった将来、個別の住宅だけではなく、複数の住宅が協調して電力の使い方を工夫するようになっていくだろう。

 パナソニックが横浜市内で2013年7月に開始した「家庭用蓄エネ機器によるデマンドサイドマネジメント(DSM)実証」実験の狙いはここにある。DSMは、住宅側の消費電力制御を差す用語だ。時間帯ごとの電気料金やインセンティブ(経済的価値)を示すことで供給側が消費側の節電行動を促すデマンドレスポンス(DR)の前提となる技術である*1)

*1) DMSの役割は2つある。1つはDRを裏付けること、もう1つは効率のよい家電を導入する助けとなることだ。DSMを使うと家電の省エネ診断が実地ででき、より効率のよい省エネ機器の導入につながる。

 実験対象となる48戸の住宅は横浜市内に散らばっている。その全てに太陽光発電システムとリチウムイオン蓄電池を導入し、HEMSを使って個別の住宅のエネルギー最適制御を進める(図1)。太陽光発電システムの容量は住宅ごとに異なる。蓄電池の容量は全て4.65kWhだ。

 エネルギー消費量が大きいエアコンやエコキュートなどの動作を家庭ごとに記録し、ライフスタイル分析を試みる。その後、分析結果に従ってエネルギー制御を進める。

 基本的な動作は、安定した電力供給が見込める場合はなるべく太陽光発電システムの出力を宅内で消費することだ。ピーク時など消費電力を抑制しなければならない時点で蓄電池を活用して系統の負担を下げる。

図1 実証実験に参加する住宅のシステム概要。出典:パナソニック

 パナソニックの実証実験では、48戸を個別に制御するだけでなく、全体を1つの蓄電池として見立てて、ピークカットにも役立てる計画だ。

 今回の実証実験は、経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証地域」に選定された横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)の一環として取り組むもの。同社のプロジェクトはDSMとDRの2系統に分かれている。DSM実証は2011年度にプロジェクトが始まり、2013年度はDSM実証(基本)を進める。これが今回の実証実験だ。2014年度はDSM実証(応用)に入る。DSM実証(応用)では、HEMSやビル向けのBEMS、工場向けのFEMSをまとめて管理するCEMS(コミュニティーエネルギー管理システム)と組み合わせた実証実験を進める予定だ。

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