「電力ゼロ」でサーバ排熱の50%を取り除く、NECが液冷技術を開発省エネ機器(3/3 ページ)

» 2013年09月05日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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サーバの排熱量のばらつきにも対応

 NECの技術は各サーバの排熱量が異なるときにも対応できる。あらかじめ定格消費電力の大きなサーバに太い配管を割り当てるのだろうか。そうではない。これでは処理内容によって消費電力が高くなった場合に対応できない。

 図4には示していないが、各配管にリザーブタンクと呼ばれる、液体を通常よりも多く流し込むための構造を付けた。あるサーバが熱くなっているとき、そのサーバの背面にある管内の液体の流量が自動的に増える仕組みだ。これを「リザーブタンク流路構造」と呼ぶ。図4右の場合だとリザーブタンクは6つある。

夏季の実験でも50%以上の排熱が可能

 多段式高効率冷却技術の仕組みは分かった。性能はどうなのだろうか。NECは2013年7月から約2カ月間、研究開発拠点である多摩川事業所(川崎市中原区)構内で、1ラック当たりの消費電力12kWのサーバに同技術を適用し、実証実験を重ねた。

 すると、図5上に示した黒い曲線のように排熱の熱輸送効率は常に50%以上となった。サーバの排熱の半分以上を運び出したということだ。「図5では生データを示しており、ラックの発熱量が20kWのときにも輸送効率は60%以上となっている。50%というのは最悪ケースの場合だ」(NEC)。

 多段式ではない従来のラック冷却技術(図5下の緑色の点線)では、逆に常に50%を下回っている。多段式の有効性が分かる。

図5 ラック冷却技術の性能。出典:NEC

 なお、ラック冷却技術にはあと2つ実現しなければならない目標があった。1つ目は配管内の液体を自然循環させることだ。液体を循環させるためにポンプなどを取り付けると、電力を消費してしまい、省エネ効果が薄れる。NECの技術では、屋外の配管の高さを高くすることで、高低差を付けて自然循環を実現している。外気に触れた蒸気は圧縮機などを使わなくても自然に液体に戻り、サーバラック側へと循環する。

 もう1つはどのような液体をどのような条件で利用するかということだ。従来のラック冷却技術では液体に「水」を使っていた。NECはオゾン化破壊係数(ODP)が0で、地球温暖化係数(GWP)が従来のHFCの2分の1となる「冷媒」を利用した。水と違い、沸騰する温度を変えることができる。つまり、サーバの排熱に適した沸点を選択でき、効率良く熱を運び出すことにつながる。「エアコンなどの空調機は使用する温度がばらつくため、沸点の低い冷媒を利用し、高い圧力をかけている。サーバは利用温度帯域が決まっているため、沸点が少し高い冷媒を低圧で使うことができた」(NEC)。

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