蓄電池でデマンドレスポンスを実現、充電・放電をネットワークから遠隔制御エネルギー管理

電力の需要を地域全体で最適な状態に制御する「デマンドレスポンス」の実現手法が進化してきた。NECは企業や家庭の蓄電池をネットワークでつなぎ、秒単位で充電・放電を制御して需給バランスを調整する技術を開発した。電気自動車に搭載されている蓄電池も活用することができる。

» 2013年11月21日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 太陽光発電を中心に企業や家庭で再生可能エネルギーを導入する取り組みが活発になっている。それに伴って発電した電力を有効に利用するために蓄電池を設置するケースも増えてきた。昼間に太陽光で発電した電力を蓄電池に貯めて、夜間に利用する方法が一般的だ。この仕組みを地域全体に拡大すれば、需給バランスを最適化する「デマンドレスポンス」を効率的に実施することが可能になる。

 NECが新たに開発した「リアルタイムデマンドレスポンス」は、情報通信ネットワークによるクラウドサービスを使って多数の蓄電池を遠隔制御する技術である。地域の電力が不足する場合に、電力が余っている蓄電池から放電して、電力が足りない蓄電池に充電することで需給バランスをとる(図1)。

図1 蓄電池を活用した「リアルタイムデマンドレスポンス」。出典:NEC

 こうした遠隔制御を実現するために、多数の蓄電池を集中管理する「適応制御ソフトウェア」をクラウド側で稼働させる。それぞれの蓄電池の状態に合わせて充電量と放電量を最適に配分して、満充電あるいは枯渇(放電不可)を回避する。この方法でネットワークにつながる蓄電池の容量全体を最大限に活用することができる。

 蓄電池にも制御用のソフトウェアを搭載して、電力の需給状況を監視しながら充電・放電を実行する(図2)。クラウドからの充電・放電の割り当ては十数分間隔で設定するが、蓄電池側では電力の使用量などをもとに秒単位で充電・放電を制御できるようになっている。

図2 クラウドによる電力需給調整と蓄電池制御。出典:NEC

 デマンドレスポンスは電力会社からの要請を受けたアグリゲータが仲介役になるケースが多い。NECは自社製の蓄電池を手始めに制御ソフトウェアを普及させながら、クラウドを使ったデマンドレスポンスのサービスをアグリゲータに提供していく。さらに自動車メーカーと連携して電気自動車の蓄電池にも制御ソフトウェアを実装して、デマンドレスポンスの対象範囲を広げたい考えだ。

 電力を中心にエネルギー管理の重要性が高まってきたことを受けて、IT(情報技術)の大手メーカーがクラウドを使ったサービスに力を入れている。政府が法制度を通じて電力市場の改革に取り組むのと並行して、ITによる電力需給システムの改革も急速に進んでいく。

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