兵庫県には農業用の「ため池」が4万以上もある。そのうちの1つで水上の太陽光発電プロジェクトが始まる。フロート式の架台に太陽光パネルを搭載して、0.85MW(メガワット)の発電を可能にする計画だ。水上では太陽光パネルの温度が地上よりも低くなり、発電量が増える利点がある。
兵庫県の内陸部にある小野市(図1)は、古くから稲作を中心に農業が盛んな地域である。市内には農業用の大きな「ため池」が数多く点在している。その広い水面を使って太陽光発電を実施する取り組みが進んでいる。
広さが3万6000平方メートルのため池の1つに、フロート式の架台を長方形状に浮かべて太陽光パネルを設置する計画がある(図2)。
全体の発電能力は0.85MW(メガワット)になり、年間の発電量は100万kWhを見込んでいる。発電の効率を示す設備利用率(発電能力に対する発電量)は13.4%を想定していて、国内の太陽光発電の標準である12%を1割以上も上回る。
というのも、水上に太陽光パネルを設置すると、地上に設置した場合よりもパネルの温度を低く保つことができて、発電効率が高くなるからだ。あとは設備の建設・維持コストを低く抑えれば、より多くの売電収入を得て投資回収を早めることが可能になる。
このプロジェクトは大阪ガスグループのエナジーバンクジャパン(EBJ)が事業者になり、地元の中島町の自治会が維持管理を担当する体制で進めていく(図3)。2014年5月に着工して、4カ月後の9月に売電を始める予定だ。EBJは売電収入から、ため池の賃借料を中島町に支払う。
兵庫県全域では4万以上のため池が分布していて、再生可能エネルギーの導入対象として県も推進する方針だ。2013年7月から小野市にある別のため池を使って、フロート式による2種類の発電設備で実証実験に取り組んでいる。
フロート式の場合には風や波の影響を考慮する必要があるため、実証実験を通じて架台の設置方法や太陽光パネルの設置角度などについても検証する。想定通りに高い発電効率を発揮することができれば、さらに多くのため池に太陽光発電を導入することが期待できる。
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