農業用の電力を地産地消、自然エネルギーと電気自動車でスマートアグリの時代へ電気自動車

宮城県の岩沼市にある農地で、電気自動車を使った「スマートアグリ」の試みが始まった。農地に設置した太陽光発電システムからの電力を充電ステーションに蓄えて電気自動車に供給、さらに農機具やハウス栽培用の電力にも利用する。化石燃料に頼らない新しいスタイルの農業を目指す。

» 2014年02月05日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 この取り組みは農林水産省が推進する「農村地域における未利用エネルギー利活用実証研究」として実施するもので、東日本大震災の被災地になった宮城県の岩沼市が対象地域に選ばれた。農村で得られる自然エネルギーから電力を地産地消する仕組みを構築することが狙いだ。

 岩沼市内にある農地の空き地に小規模の太陽光発電システムのほか、リチウムイオン電池と急速充電器で構成する充電ステーションを設置した(図1)。この実証研究のために、三菱自動車工業が軽トラック型の電気自動車を近隣の農家に貸し出す。

図1 農地に設置した太陽光発電システム(上)と充電ステーション(下)。出典:三菱自動車工業、ニチコン

 太陽光発電の電力はリチウムイオン電池に蓄えられて、急速充電器から電気自動車に電力を供給する。さらに電気自動車に残った電力を可搬式の給電装置に送ることで、農機具やハウス栽培の電力としても使うことが可能だ(図2)。

 農村の中には電力会社の送配電ネットワークが整備されていない地域もあり、そうした未電化地域でも電動農機具を自在に使えるようになる。一方で電化されている地域では災害時の電力源として使えるメリットがある。

図2 自然エネルギーを農業に利用する流れ。出典:三菱自動車工業、ニチコン

 実証研究では1日あたりの発電量を80kWhと想定して、電気自動車(バッテリー容量16kWh)に対して1日3回程度の給電を実施する。この方法を通じて農業に利用した場合の有効性などを検証していく。

 今後は太陽光発電のほかにも、農業用水による小水力発電や、農地に設置できる小型風力発電システムを展開する計画だ。それぞれの発電設備と充電ステーションを組み合わせて、地域全体で自然エネルギーを地産地消できる「スマートアグリネットワーク」の構築を目指す。実証研究の実施期間は2017年度までを予定している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.