第4回:風力発電設備の安全認証安全・安心・信頼できる風力発電所(4)

風力発電所で事故が起きてしまうと、発電量に影響を与えるばかりか、事業の採算性に影響を及ぼし、最悪の場合には人命にもかかわる。風力発電の安全性は社会的な責任を伴うものである。事故を防ぐ上で風力発電設備の安全認証が重要な役割を果たす。

» 2014年03月24日 15時00分 公開
[川口昇/UL Japan,スマートジャパン]

第1回:「風力発電の最新動向」

第2回:「風力発電の風況・海洋調査」

第3回:「風況・海洋調査データを活用した事業評価方法」

 風力発電では万一の事故が起きた場合に、当該の発電機のみならず、発電所全体の停止に発展するおそれがある。当然ながら年間の発電量や事業の採算性に大きな影響を与える。発電機が停止することによって、安定した電力供給が途絶えるなど社会的なリスクも大きい。加えて風車の倒壊などによる部品の飛散は、発電機の大きさから考えて人命にも危険を及ぼしかねない。

 こうした事故による影響を未然に防止するためにも、風力発電機の安全認証は極めて重要である。国際的な認証制度は「IEC 61400シリーズ」に基づいており、以下のような標準規格がある。

  • 国際規格

IEC 61400-1 ed.2(安全要求)

IEC 61400-2(小型風力発電の安全)

IEC 61400-11(騒音測定方法)

IEC 61400-12(発電測定方法)

IEC 61400–121(系統接続の発電品質測定方法)

IEC 61400–122(電力品質検査検証)

IEC 61400–123(風力発電所品質試験)

IEC 61400-13(機械強度測定方法)

IEC 61400-21(系統連系に対する電力品質要求)

IEC 61400-22(風車認証制度)

IEC 61400-23(回転翼の総合的な構造試験)

IEC 61400-24(風力発電機の雷からの保護)

 このほかにも地域や国ごとに独自の法律・規制が存在する。以下に代表的なものを列挙する。

  • 欧州の規格

EN 1991-1-4 Eurocode 1(構造に関する規定)

EN 50308:2004(風力発電−保護基準)

  • 欧州各国の規格

DIBt-Guideline(ドイツ建設技術研究所ガイドライン)

MEASNET(ドイツ電力品質測定手順)

MCS(英国小型風力発電機)

  • 米国の規格

UL6141(大型発電機安全規格)

UL6142(小型発電機安全規格)

日本の小型風力発電を対象にした認証制度

 日本では経済産業省の日本再興戦略でも、クリーンで経済的なエネルギーの普及政策を進めている。重点戦略分野として再生可能エネルギーを取り上げており、より経済的な風力発電の実現に注力することも掲げている。

 2012年7月から固定価格買取制度が新たに始まり、小型風力発電の適合要件として「JSWTA0001」に基づく型式認証制度が開始された。小型風力発電は出力20kW未満で、直径16メートル以下の設備が対象になっている。

 JSWTA0001の試験範囲には発電機本体のほかに、タワー、コントローラ、インバータ、ワイヤリング、設置、動作マニュアルまでを含む。認証機関としては日本海事協会が認定されていて、試験機関にはUL Japanなどが認定されている。

 風力発電事業者は認定試験機関による試験レポートを日本海事協会に提出することにより、JSWTA0001の認証を受けることができる。この認証をもって小型風力発電設備が固定価格買取制度の対象になる。

 このところ風力発電設備の倒壊・破損などの事故が多発しているものの、幸いにも人命に影響を与えるような事態には至ってはいない。しかしながら今後は小型風力発電のみならず、大型風力発電を普及させるためには、安全規格認証制度の構築が不可欠である。日本に安全・安心・信頼できる風力発電所を広める上で、安全認証は基本的かつ最も重要な要件になる。

著者プロフィール

川口 昇(かわぐち のぼる)

UL Japanマーケティング部部長。電機メーカー在職中に通算10年間にわたって欧米の現地法人でマーケティング関連の業務に従事。その後アメリカの安全認証機関ULの日本法人であるUL Japanに勤務し、風力発電など再生可能エネルギー分野の規格開発支援、普及、政府工業会に関する活動を北米本社と連携して行う。


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