発送電分離へ向かう東京電力、グループ会社で小売事業を全国展開電力供給サービス

いよいよ東京電力が小売事業の全国展開に乗り出す。関西と中部で10月にも販売を開始して、順次エリアを拡大していく。新電力に登録したグループ会社が小売を担当するが、その先に見据えるのは本体の小売事業部門との統合だ。発送電分離を先取りして2016年度にも組織改革を実行する。

» 2014年05月26日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 東京電力が100%出資するグループ会社の「テプコカスタマーサービス(TCS)」が、5月22日に新電力(特定規模電気事業者)の届出を完了した。TCSは2013年7月から東京電力の電気料金計算業務のほか、電気機器の取り付けや技術サービスを担当している(図1)。今後はスマートメーターなどを生かした割安なメニューを提案して全国各地で顧客を開拓していく。

図1 営業と配電分野のグループ会社統合(2013年7月)。出典:東京電力

 当初は市場規模が大きい関西と中部から小売事業を開始する予定だ。東京に本社がある企業を対象に、各地域の事業所が利用する電力を一括で受注することを目指す。東京電力本体の小売事業部門である「カスタマーサービス・カンパニー」と共同の体制で、グループの総合力を生かして全国規模で営業を展開する戦略である(図2)。

図2 小売事業の拡大戦略。出典:東京電力

 東京電力は政府が2018年にも実施する「発送電分離」に向けて、発電・送配電・小売を事業会社に分割する構想を進めている(図3)。小売事業会社はカスタマーサービス・カンパニーを中核にして、TCSを統合する可能性もあり、いち早く全国展開を進めて顧客拡大を図る狙いだ。

図3 発送電分離を先取りした組織改革。出典:東京電力

 電力会社では売上規模で第3位の中部電力が先陣を切って2013年10月に首都圏の小売事業に進出した。続いて第2位の関西電力も2014年4月から首都圏の小売事業を開始している。いずれもグループ会社による新電力としての事業だが、実際には電力会社による小売事業の拡大になる。

 すでに企業向けの小売は自由化されているため、関東・中部・関西を中心に電気料金の値引き競争が激化することは必至だ。最大手の東京電力は関東以外のエリアで2016年度に340億円、2023年度に1700億円の売上目標を掲げている。流通業などの新規参入の会社も加えて、電力市場の自由競争が急速に進んできた。

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