2つの顔を持つメガソーラー、工場と組み合わせて停電時に備える電力供給サービス

GSユアサは群馬事業所内の遊休地に出力1MWのメガソーラーを立ち上げる。通常時の全量売電に加えて、停電時には事業所内に電力を送ることが可能な設計だ。蓄電池や電気自動車用の急速充電器と組み合わせた用途も見せる。

» 2014年07月01日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 群馬県伊勢崎市と発電所(赤丸)の位置 

 「通常時は出力1MWの太陽光発電所として機能し、電力系統側が停電した場合、300kW分を非常用電源として構内で利用できるよう工夫した。停電時には容量約100kWhのリチウムイオン蓄電池を太陽光発電で充電し、夜間にも利用できるようにする。さらに併設した急速充電器を使って、電気自動車を動かせる設計とした」(GSユアサ)。

 GSユアサは2014年6月、同社の群馬事業所(群馬県伊勢崎市、面積約14万7000m2)内の遊休地に、出力1MWの太陽光発電所を建設すると発表した。「総事業費は約3億円である」(同社)。2014年7月に着工、2015年1月に運転開始を予定する。年間発電量として1100MWh(110万kWh)を見込む。

 同社は2013年6月に今回と同出力の「いわきユアサ太陽光発電所」(図2)を完成させており、群馬事業所は2カ所目の太陽光発電所となる。

図2 いわきユアサ太陽光発電所 出典:GSユアサ

停電時に備え、事例として顧客に提示

 同社が群馬事業所に建設するメガソーラーの特徴は、冒頭の発言にあるように2つの役割を持たせたことだ。平常時は固定価格買取制度(FIT)を利用して全量を東京電力に売電し、停電時には工場や周辺設備に電力を供給する。

 同社は太陽電池モジュールこそ他社製品を利用するものの、パワーコンディショナーやリチウムイオン蓄電池、電気自動車用の急速充電器を複数種類、開発、販売している。このため、停電時のメガソーラーはBCP(事業継続計画)に役立つだけでなく、同社製品の事例としても有用だという。

図3 設置するパワーコンディショナー「ラインバックオメガ」(左)と「ラインバックΣIII」 出典:GSユアサ

 パワーコンディショナーとして出力100kWの「ラインバックオメガ」を9台、出力50kWの「ラインバックΣIII」を2台組み合わせて容量1000kWとした(図3)。「停電時には、このうちオメガを2台、ΣIIIを2台動かして、300kWを確保する」(同社)。「群馬事業所はリチウムイオン蓄電池の製造拠点であり、製造時の電力を全て賄うことはできない。管理部門などに供給する予定だ」(同社)。

図4 設置するリチウムイオン蓄電池「LIM50シリーズ」 出典:GSユアサ
図5 電気自動車用急速充電器「EVC-R」 出典:GSユアサ

 リチウムイオン蓄電池として同社の「LIM50シリーズ」を組み合わせて用いる(図4)。「当社のパワーコンディショナー内部には蓄電池を内蔵することができるタイプがあるものの、メガソーラーでは別に電池ボックスを併設して設置する」(同社)。通常時は蓄電池を使わず、停電時に太陽光発電システムによって充電して、外部に供給する。

 電気自動車用急速充電器は同社の「EVC-R」を用いる(図5)。「通常時は電力会社から低圧電力盤を経由して充電器へ電力を供給し、停電時はリチウムイオン蓄電池の電力を使う」(同社)。急速充電器の出力は20kWだ。

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