エリーパワーは持ち運び可能な蓄電池を2014年9月に発売する。容量は4万8500mAh。個人向けというより、小規模オフィスのニーズに応える製品だ。ACアダプターや太陽電池で充電できる。
「当社はこれまで比較的大容量の蓄電池のみを開発、販売してきた。例えばオフィスなどで利用する2.45kWhや6kWhの製品だ。今後はより小容量の市場も狙っていく。大容量蓄電池を導入することは難しいものの、日常用途に利用でき、停電や防災対策にも役立つ製品を望んでいる層に向ける」(エリーパワー)。
同社が考える市場は例えばスモールオフィス(SOHO)だ。USBポートを10個備え、スマートフォンをのべ20台充電できるような蓄電池は、個人にはオーバースペックだろう。だが、スモールオフィスには向いている。「ポータブル蓄電システム ELIIY ONE(MBU-10)」はまさにこのような製品だ(図1)。「新しい市場に向けた最初の製品であるため、販売台数を1000台に限定した。発売後の感触をみて、ラインアップの拡大などを考えていく」(同社)。
2014年9月1日に発売する。「法人ルートで販売する。想定価格は10万円前後だ」(同社)。
ELIIY ONEの狙う市場は、同社の他の蓄電池が狙うものとは異なる。市場に合わせて仕様も大きく変えた。通信機能は備えておらず、HEMSと連携する機能もない。タイマー充電にも対応していない。
手軽に利用できることを重視した。電池以外の周辺設備は不要、ACアダプターを使って充電できる*1)。非常用に役立つよう、太陽電池を用いた充電機能もある。
*1) 19V、3.15AのACアダプターを使う。負荷が接続されていない場合、約6時間で充電が完了する。利用できる太陽電池はシート状の製品などエリーパワーが認定した製品に限られる。
従来製品とは重量が1桁違う。約3kgであり、持ち運びが可能だ。蓄電した電力を取り出すためにコンセントではなく、USBポートを10個用意した。1ポート当たりの出力は5W(5V、1A)。10ポート全てを同時に利用したときも、個々のUSBポートが利用できる電力は下がらない。
寿命も長い。環境温度が23度であれば、1日当たり3回フル充放電をくり返した場合、4000日(約10年)利用可能だ。
蓄電池の容量は155Wh(4万8500mAh)。スマートフォン(容量1500mAh)を合計20台充電でき、消費電力1.3WのLED照明であれば約80時間点灯可能だという。
ELIIY ONEが備えるインタフェースを図2に示した。右上部分が電池本体に内蔵した小型の照明用LEDとスイッチ。その下に充電状態を示すLEDが並ぶ。右下が電池全体のスイッチ、左下がACアダプター用のコネクタだ。USBポートの形状は全てType-A。
ELIIY ONEは、正極にリン酸鉄リチウムを採用したリチウムイオン蓄電池セルを1つだけ内蔵する。産業用として認証(TUV-S認証)された信頼性の高いセルだという。「一般には『18650』と呼ばれる円筒形のセルを組み合わせたモジュールを採用する小容量蓄電池が多い。当社のセルは国内の自社工場で製造しており、安全性が高い」(同社)。
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