出資企業が倒産しても大丈夫、20年間動く太陽光自然エネルギー

東洋ケミカル機工は茂原市の市有地を用いた太陽光発電所の運転を2014年8月に開始したと発表。特徴は「倒産隔離」手法を用いて、出資会社と発電事業者を切り離したこと。発電が続く限り、地代や固定資産税の支払いが滞ることがなく、地方自治体にとっても有利な取り組みだという。

» 2014年09月16日 16時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 「茂原市から土地を借り、太陽光発電事業を開始する際、20年間確実に運営できる仕組みを探った。共同出資という形を採ると、出資した企業が傾いたときに発電事業への影響が大きい。茂原市にとってはリスクになる。そこで倒産隔離を施した。倒産隔離は不動産開発などではしばしば用いられる手法だが、メガソーラーに適用した例は全国でもほとんどない」(東洋ケミカル機工)。

 まず、東洋ケミカル機工が一般社団法人である自然エネルギー利用促進協会を設立。協会が資本金を拠出して太陽光発電事業の特別目的会社(SPC)である茂原ソーラーユートピアを設立した。倒産隔離によってSPCの経営安定性を高めた形だ。「発電が続く限り、SPCが倒産することはない」(同社)。

 SPCに対して関東天然瓦斯開発と千葉石油、千葉銀行、房総信用組合、東洋ケミカル機工の他1社が出資、さらに千葉銀行のノンリコースローン*1)を加えた。事業費5億5500万円のうち、5割弱を出資でまかなったという。

 SPCを中心に以上の仕組みを描いたものが図1だ。

*1) ノンリコースローン(非遡及融資)とは貸し手側が原資の返済を融資対象の資産以外に求めない資金融資方法。

図1 SPCと出資企業などの関係(クリックで拡大) 出典:東洋ケミカル機工

茂原市のための太陽光発電所

図2 千葉県茂原市と発電所の位置

 「茂原ソーラーユートピア第1発電所・第2発電所」(茂原市八幡原、図2)は、田畑と小規模な森林が入り交じる平地に位置する。茂原市西部地区住宅団造成事業予定地として、市が確保していた土地ではあるものの、長年、利用されていなかった。「土地全体は5万2407.12m2ある。雨水対策の貯水池などを除いた3万8035m2を太陽光発電所として利用した」(同社)。

 茂原市は2013年6月に、茂原市メガソーラー設置事業をプロポーザル方式で公募、同年7月に東洋ケミカル機工が選定された。2013年12月に着工、8月に完成したところだ。

 プロポーザル方式の公募であるため、メガソーラーの目的として発電所を通じた地域貢献を強く打ち出している。冒頭に紹介した倒産隔離の手法によって、市のリスクを抑えた他、出資企業を地域企業で固めている。施工・運営でも地域貢献策をうたう。施工では工事部分のほとんど全てを地域企業に外注しており、完成後の管理運営のうち、草刈りや太陽電池モジュールの清掃は茂原市シルバー人材センターが当たる。

 発電所の規模は1.73MW(第1発電所0.74MW、第2発電所0.99MW)。年間発電量は164万5000kW(20年間の平均予定値)。固定価格買取制度(FIT)を利用して20年間全量を東京電力に売電する。買取価格は36円(税別)。従って、年間の売電額は約6400万円だ。「茂原市には地代と固定資産税を合わせて20年間で約1億2700万円を納める予定だ」(東洋ケミカル機工)。

 図3に示したメガソーラーではインリーソーラーの多結晶シリコン太陽電池モジュール(出力250W)を7056枚使用し、クリーンエナジーの全アルミニウム製架台に設置した。パワーコンディショナーは東芝三菱電機産業システムのものを採用した。500kW品を3台と250kW品を1台である。

図3 茂原ソーラーユートピアの外観 出典:東洋ケミカル機工

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