中国地方は接続保留の必要なし、再生可能エネルギーの伸び悩みも背景に法制度・規制

中国電力は管内5県の再生可能エネルギーの導入状況をもとに、現状では発電設備の接続を保留する必要がないことを明らかにした。需要が少ない時期でも再生可能エネルギーの導入量を十分に上回っている。2014年度に入ってから固定価格買取制度の認定量が横ばいになったことも背景にある。

» 2014年10月24日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 九州をはじめ再生可能エネルギーによる発電設備の接続を保留する事態が全国に拡大する中で、中国電力がサービス区域の5県における現在の状況と当面の見通しを公表した。他の地域と同様に固定価格買取制度が始まった2012年7月から、太陽光を中心に送配電ネットワークに接続する発電設備が増え続けている。

 2014年9月末の時点では、「接続済」と「接続申込済」を合わせて433万kWに達した(図1)。このうち天候の影響を受ける太陽光が375万kW、風力も47万kWを占めていて、両方で全体の97%以上になっている。九州などで懸念されている需給バランスの問題は2つの要因があり、1つは天候による出力の変動、もう1つは再生可能エネルギーの供給量が地域の電力需要を上回ってしまうことである。

図1 中国電力のサービス区域における再生可能エネルギーの導入量(接続状況)。出典:中国電力

 2つの問題ともに、送電線の容量が発電設備の出力に対して余裕があれば心配する必要はない。その点で中国地方の5県(鳥取・島根・岡山・広島・山口)における再生可能エネルギーの発電設備が今後どのくらい増えるかが重要になってくる。太陽光発電の買取価格が引き下げられた2014年度に入ってから、固定価格買取制度の認定を受けた発電設備は5県を合わせても4カ月間で32万kWしか増えていない(図2)。

図2 中国地方の5県における固定価格買取制度の設備認定量。出典:中国電力

 こうした状況をもとに需給バランスを見ると、2013年度に中国電力の管内で昼間の13時台の需要が最も少なかったのはゴールデンウイーク中で540万kWだった(図3)。対して固定価格買取制度の認定を受けた発電設備がすべて運転を開始しても526万kWにとどまり、最小需要を下回る。実際には運転に至らない発電設備も出てくることから、当面は再生可能エネルギーの供給量が需要を上回る状況にはならないと考えられる。

図3 中国地方の最小需要(13時台)と再生可能エネルギー導入量の比較。出典:中国電力

 ただし中国電力は2つの点で懸念を示した。1つ目は他の地域で接続保留の状態が長引くと、今後は中国地方に発電設備を建設する事業者が増えていく可能性があることだ。特に瀬戸内海の沿岸部は日射量が豊富で、太陽光発電に適している。2つ目の懸念は、そうした太陽光発電の適地を中心に送電線の容量不足が顕在化しつつある。

 この2つの状況が重なった場合には、地域を限定して接続保留の措置をとる必要が生じかねない。現実に東京電力の管内でも、東京・神奈川・埼玉を除く6県の一部地域で送電線の容量不足が起こり始めている。

 地域によって再生可能エネルギーの導入可能量と送電線の容量のバランスは違う。今後は再生可能エネルギーの導入量が多い地域で送電線を増強する一方、政府が主導して再生可能エネルギーを推進する対象地域を選定する必要もありそうだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.