北海道の森林資源を100%活用、バイオマス発電で1万1000世帯分自然エネルギー

再生可能エネルギーの中で最も安定した電力源になるバイオマス発電が全国各地で活発になってきた。三井物産は住友林業や北海道ガスなどと共同で、発電能力が5.8MWのバイオマス発電所を苫小牧市に建設する。地域の未利用木材を100%活用して、1万世帯分を超える電力を供給する計画だ。

» 2014年10月28日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 三井物産は北海道の5カ所に森林を所有して林業を展開している。その中で事業活動が最も活発な南部の「似湾(にわん)山林」を中心に広がる森林資源を生かして、新たにバイオマス発電を開始する(図1)。

図1 未利用木材を供給する三井物産の「似湾山林」。出典:三井物産

 発電所を建設する場所は似湾山林から30キロメートルほど西にある苫小牧市の臨海工業地帯で、2015年5月に着工する予定だ。発電能力は5.8MW(メガワット)を予定していて、2016年12月に運転を開始する。年間に約6万トンの未利用木材を利用して、発電量は約4000万kWhを見込んでいる。一般家庭で1万1000世帯分の電力になる。

図2 未利用木材の集荷対象地域。出典:三井物産

 燃料には地域の森林から発生する間伐材や林地残材などを100%利用する方針だ。木材を集める対象の地域は、発電所を建設する苫小牧市の周辺150キロメートル圏内を想定している(図2)。三井物産が所有する山林のほか、国有林や道有林、民有林からも調達する。

 未利用木材は林地で木質チップに加工して発電所に供給する(図3)。年間に6万トンにのぼる未利用木材を活用することで林業を振興するほか、チップの加工・運搬と発電事業を通じて地域の雇用を創出する狙いもある。

図3 燃料に利用する木質チップ。出典:三井物産

 発電事業は新設する「苫小牧バイオマス発電」が担当する(図4)。新会社には三井物産のほか、地元で林業を営むイワクラ、さらに住友林業と北海道ガスが出資して、有力企業による連合体でバイオマス発電事業を推進していく(図4)。固定価格買取制度を適用すると、年間の売電収入は約12億8000万円になる。

図4 バイオマス発電事業のスキーム。出典:三井物産

 発電した電力は全量を北海道ガスが買い取る。北海道ガスはバイオマス発電所が運転を開始する2016年末までに電力小売事業に参入することになる。電力に続いてガスの小売全面自由化も2017年4月に実施される見通しで、再生可能エネルギーによる電力とガスを組み合わせた事業を拡大していく。

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