LPガスからも水素を製造、全国100カ所への足掛かり電気自動車

水素をLPガスから製造する装置「HYSERVE-300P」の販売を大阪ガスが2015年1月に開始した。都市ガスが得られない地域でも、水素をステーション内で製造できる。

» 2015年01月14日 15時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 「2025年までに立ち上がる水素ステーションの数は1000カ所*1)。そのうち、ステーション内で水素を製造するオンサイト方式は2割。当社はオンサイト方式のうち100カ所以上への導入を目指す」(大阪ガス)。

 これを実現するために、オンサイト方式の装置を2種類用意した。2013年10月にはまずメタンを主成分とする都市ガスから水素を製造する装置「HYSERVE-300」を発売。続いて2015年1月5日にはプロパンを主成分とするLPガスを利用する装置「HYSERVE-300P」(図1)の販売を開始した*2)。100カ所というのは300と300Pを合計した数値だ。

 都市ガス以外にLPガス用の装置を製品化した理由は、都市ガスの地域カバー率が約5%と低いため。LPガスの地域カバー率は100%近く、ほとんどの地域でLPガスを原料として水素を製造できる。「HYSERVE-300Pの販売地域は全国の都市ガス供給エリア外だ」(同社)。

*1) 燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)が2010年3月に公開したシナリオ。2014年7月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公開した水素エネルギー白書でもこの数値を引用している。
*2) グループ企業である大阪ガスエンジニアリングが販売し、リキッドガスが設置と製造した水素を供給するサービスを展開する。

図1 HYSERVE-300Pの外観 出典:大阪ガス

低コスト、省スペース、高効率をうたう

 「HYSERVE-300Pの価格は同300とほぼ同じ。2億円弱だ。オンサイトの水素ステーションの初期コストは国の資料では5〜6億円(供給能力が1時間当たり300Nm3の場合)となっている」(同社)。

 HYSERVE-300Pの水素製造能力は、1時間当たり300m3(0度、大気圧換算:Nm3)。製造能力が100Nm3のHYSERVE-100Pを3台設置した場合と比較して、設備コストを約50%削減した。設置面積も42%減っている。本体の寸法は幅7.5m、奥行き3.0m、高さ3.3m*3)

 プロパン98%、エタンとブタンが2%というLPGを原料として用いた場合の改質効率は75.6%*4)。「都市ガスを原料とする300よりも幾分効率が落ちるものの、LPG用としては世界トップクラスだと考える」(同社)。製造後の水素の純度は99.999体積%以上であり、そのまま燃料電池車に充填できる品質だ。

*3) 水素ステーションを立ち上げるためにはHYSERVE-300P以外に原料圧縮機や純水装置、冷却灯、制御盤の他、蓄圧器やディスペンサーなどが必要。
*4) 水素1Nm3の製造に必要な原料原単位は0.167Nm3

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