福島第一 廃炉へ一歩一歩、宇宙線を使い原子炉内を見る装置を開発電力供給(1/2 ページ)

東芝と技術研究組合国際廃炉研究開発機構は宇宙から降り注ぐ宇宙線ミュオンを用い、福島第一原子力発電所向けに原子炉内の燃料デブリの位置などを測定できる装置を開発した。

» 2015年04月02日 09時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 福島第一原子力発電所(以下、福島第一原発)2号機では、溶け落ちた核燃料が「原子炉内のどの位置にあるのか」「どう分布しているのか」ということを把握できず、取り出し手順や工法の検討ができない状況にある。これを解決するために東芝と技術研究組合国際廃炉研究開発機構(以下、IRID)が開発したのが、今回の宇宙線ミュオン(ミュー粒子)を利用した測定装置だ。

 ミュオンは高エネルギーの電子や陽子などが大気中の窒素や酸素と衝突し発生する宇宙線の一種で、物体を通り抜ける能力が高いことが特徴だ。地上には1分間に1平方センチメートル当たり1個の割合で降っているという。既に、ピラミッドの内部調査や火山の密度測定などに利用されている。

ミュオンを活用した2つの測定方法

 ミュオンを利用した物質の測定方法には、「透過法」と「散乱法」という2種類の方式がある。ミュオンは物質を通り抜けるが、その際に物質の影響を受け、その物質の密度によって、弱まったり曲がったりする。透過法はこの「弱まる」性質を利用したもので、透過してきたミュオンを測定する。例えば、ある密度の高い物質を透過してきた場合、その物質を透過したミュオンだけが弱くなるので、その領域に何かが存在することを把握できるという仕組みだ。

 一方、「曲がる」という性質を利用するのが散乱法だ。これは向かい合う2枚の測定機を設置し、1枚でミュオンの入射角を、もう1枚でミュオンの出射角を測定するという方式だ。ミュオンは、物質にぶつかるとその元素の重さに比例して曲がる。そのため、同じミュオンの入射角と出射角を比較すると、その通過した領域にどういう元素が存在したかが分かる。

photo ミュオンを用いた物質分布測定の原理(クリックで拡大)※出典:東芝

 東芝原子力福島復旧・サイクル技術部の四柳端氏は「透過法は、物資の『ある、なし』を判定するには優れた方法だが、精度が1メートル範囲である点、物質そのものが何かを把握できない点が課題。一方で、散乱型は、30センチメートル単位の精度が実現できる。また物質の識別が可能なことは、最大の利点となる。福島第一原発では、重い元素で構成される燃料デブリの位置を特定しなければならないため、今回のプロジェクトでは散乱型を採用することに決定した」と述べている。

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