福島第一 廃炉へ一歩一歩、宇宙線を使い原子炉内を見る装置を開発:電力供給(2/2 ページ)
東芝は2013年からロスアラモス国立研究所と共同研究を行っており、ミュオンの検出技術そのものについてはロスアラモス国立研究所の技術を利用している。東芝は、これに、放射線ノイズを除去する電気回路とアルゴリズムなどの独自技術を組み合わせて、今回の測定装置を開発した。
測定装置は、8×8メートルの大きさで2基を向かい合わせて測定する形となる。1基当たりの重さは20トンだという。
原子炉内を挟み込むような形で測定する(クリックで拡大)※出典:東芝
センサー部分には直径5センチメートル、長さ7メートルのドリフトチューブ検出器を一基当たり1680本採用。センサー層数はX方向に6層、Y方向に6層で、有感面積は7×7メートルとなっている。これらで得た情報を測定回路およびFPGA回路を経由してPCに集め、独自のアルゴリズムで処理した上で内部の測定結果を表示する。
公開されたミュオン検出装置。8×8メートルで1基当たりの重さは20トンにも及ぶ。福島第一原発では、これをそれぞれ立てて測定することになる(クリックで拡大)
実際の福島第一原発では、高線量下での測定となり、ガンマ線の影響が想定されるが「ガンマ線は透過性が低いのでセンサーで止まる形となるが、ミュオンは透過性が高いので、連続軌跡を取ることで測定されたものがガンマ線なのかミュオンなのかを把握できる。これを生かしてガンマ線をノイズとして除去するアルゴリズム処理を施せば、より正確な内部映像を表示できる」(東芝)としている。シミュレーションでは、30日、90日、180日と測定を進めるにつれて、燃料デブリの位置を鮮明に把握できる結果を得たという。
シミュレーションの結果。30日、90日、180日と時間が経過するほどに鮮明な位置が把握可能となっている(クリックで拡大)※出典:東芝
今後は、福島第一原発への設置方法などの検討を開始し、2015年度(2016年3月期)下期には測定を開始する予定だとしている。
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