蓄電池の導入に最高5億円の補助金、太陽光と風力の出力制御に備える補助金

再生可能エネルギーによる発電設備の出力制御に備えて、発電事業者を対象に蓄電池の導入を支援する補助金制度が始まった。太陽光と風力の発電設備に限り、中小企業や自治体などは導入費用の2分の1まで、大企業には3分の1まで補助金を交付する。1件あたりの上限は5億円と高額だ。

» 2015年04月06日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 政府が1月26日に施行した新しい出力制御ルールは、再生可能エネルギーの発電事業者の収益に大きな影響を与える可能性がある。電力会社は地域の需給状況に応じて、太陽光や風力による発電設備の出力を無保証で抑制することができるからだ。その対象が新ルールで大幅に広がった(図1)。

図1 発電設備の出力制御ルール(2015年1月26日から適用)。出典:資源エネルギー庁

 再生可能エネルギーの拡大を阻止するような新ルールだが、政府も影響を緩和できるように緊急対策を実施する。2014年度の補正予算で確保した265億円を使って、蓄電池の導入を支援する「再生可能エネルギー接続保留緊急対応補助金」を開始した。

 補助金を受けるためには、事前に「予約申請」が必要になる。受付期間は3月31日〜11月30日までの8カ月間である。政府の委託を受けて「環境共創イニシアチブ」が申請を受け付ける(公募の詳細を記載したウェブサイトへ)。

 補助金の対象になる蓄電池の条件は、容量が10kWh(キロワット時)以上の場合だ。家庭用の蓄電池は10kWh未満の製品が多く、複数台を導入して10kWh以上の構成にする必要がある。蓄電池に接続して使う周辺装置も対象に含めることができるが、パワーコンディショナー(PCS)は発電設備用と切り分けなくてはならない(図2)。

図2 補助金の対象になる蓄電池の導入例。出典:環境共創イニシアチブ

 この補助金は国内の企業と自治体、個人や個人事業者でも申請することができる。ただし新規に蓄電池を導入する場合に限られる。補助金の交付が決定する前に電力の供給を開始した場合は対象外になるので注意が必要だ。

 中小企業や自治体であれば、導入費用の2分の1まで補助金の交付を受けられる。個人や個人事業者の場合も同様に2分の1以内である。大企業だけは導入費用の3分の1以内になる。上限は1件あたり5億円に設定されているため、大規模な蓄電池システムでも費用を抑えて導入することが可能だ。

 蓄電池の容量が大きい場合には、工事費も補助金の対象になる(図3)。蓄電池は一定の容量以上になると、消防法によって設置場所などに制限がある。工事費が通常よりも高くなるため、補助金の適用範囲に加えた。その基準になる容量は4800Ah(アンペア時)・セルである。蓄電池はセルと呼ぶ構成要素を組み合わせて作られていて、1つのセルの容量が4800Ah以上の場合に消防法の規制を受けることになっている。

図3 補助対象の費用と条件(画像をクリックすると拡大)。出典:環境共創イニシアチブ

 補助金の適用を受けるためには当然ながら、出力制御の対象になることが前提である。新ルールでは太陽光発電設備の条件が地域によって違う(図4)。出力の大きさのほかに、電力会社に接続を申し込んだ日や承諾を受けた日で決まる。

 それぞれの地域で出力制御がどの程度の規模で実施されるかは、現時点では見通すことが難しい。とはいえ北海道や九州などは実施する確率が大きいと考えられる。発電設備が出力制御の対象になる場合には、この補助金を活用して蓄電池を導入するのが得策だろう。

図4 出力制御の対象になる太陽光・風力発電設備。出典:環境共創イニシアチブ

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